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軍律・規律

昨日お届けした『夢中力』に対して、いくつかのメールを頂戴している。2通ほどご紹介しながら、補足もしてみたい。

・当社には天才セールスマンと私がよんでいる腕利きの部下がいます。彼には、ず~っと何度注意しても直らない会議中の居眠  り、という問題点があります。あれはひょっとしてADHDなのかも知れないと思うほど条件反射のように眠ります。「夢中  力」があればそれも良いのかなぁと思って、多少は自分の気持ちも整理をつけることにしました。

・武沢さん、今日の内容たいへん参考になりました。当社は広告企画の仕事をしていますが、社長の私自身、机の上が今まで一度 も片づいたことがありません。ほとんどの部下も同様です。キレイにしようと思ったことは何度もあるのですが・・・。でも今 日の「がんばれ社長!」を読んで、そんな弱点を補って余りある別の才能の部分で勝負しようと決意を新たにしました。

昨日の原稿、『夢中力』のバックナンバーは私のサイトにあるのでご参照願いたい。 http://www.e-comon.co.jp/

『夢中力』をお読み頂いて、それを何かの安心材料や逃げ口上に使うようなことは避けていただきたい。ADHDなどという傷害はごく一部の話であって、大部分の人には無縁であるはずだ。

有名人にも基本が守れない人が多かったからと言って、基本の徹底やしつけ教育の徹底ということを軽んじてはならないのだ。

企業という組織を軍隊だと考えてみよう。
孫子いわく、「兵を百年養うは、ただただ平和のため」ではあるものの、同時に孫子は、軍律を大変重んじる人物でもあったようだ。彼のしつけ徹底力を物語るエピソードをひとつご紹介しよう。

ある時、孫子は呉の国王に謁見した。

孫子が自ら書いた著書十三篇を読んだ呉王は、試しに宮中の女官たち180人を兵に見立て、孫子に軍隊を指揮させることにした。

孫子はその180人を二隊に分け、王が溺愛する姫二人をそれぞれの隊長に任命した。孫子は軍令を定め、違反者を罰する鉞(まさかり)を手にもった。

そして孫子は太鼓を打って号令を発した。だが、女官たちは笑っているばかりで、全く無視した。孫子は呉王に詫びた。「軍令が明らかでなく、申し渡しが部隊にゆきわたらないのは、将たる私の罪です」と。そして、もう一度軍令の意味を女官たちに説明した。

再び太鼓の号令が出された。しかし、女官たちは、またもや動こうとせず、ただ笑っているばかりであった。

孫子は、「すでに軍令は明らかであるのに、兵が規定通り動かないのは、隊長の罪である。」として、左右の隊長を斬ると宣言した。左右の隊長とは、呉王が溺愛する二人の姫のことだ。

あわてた呉王は、「二人を斬らないでくれ」と懇願したが、孫子は、「臣はすでに君命を受けて将となっています。将たるものが軍中にある場合には、君命であってもお受けしないことがあります。」として、孫子はついに隊長の姫二人を斬った。

こうして軍律を全員に示し、別の女官を隊長として再び女官らに軍令を説明した。孫子が三度太鼓を打って号令を下した。女官たちは、みな真剣に命令通り整然と行動した。これをみて呉王は、孫子が用兵に優れていることを知り、将として招き入れる決意をした。

孫子のこのエピソードが私たちに伝えるものは、軍律を守ることの重要性と、そのためには何かを失うような場面もあると言うことだ。この逸話では、愛する姫を一瞬にして二人も失ってしまったが、同時にかつてないほど強い軍律を手に入れることが出来たというものだ。ことほど左様に、軍律とは大切なものである。現代用語でいえば、組織の規律とは、徹底力とかしつけ力になるだろう。