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I社長の精気

イージス艦と漁船が衝突した事故。漁船の親子の安否が気遣われるが、事故の一報が防衛大臣の耳に入るまでに1.5時間、総理大臣までが2時間だったというのには驚いた。

「自衛隊はなにやってるんだ」と憤慨もするし、保身に走る組織と人間というものを考えさせられもした。

日頃の教育訓練ってなんなのだろう?
下から上への報告はこんなにも時間がかかるものだろうか?

自衛隊員のみならず、バッドニュース(悪報)ほど速やかに直属上司に報告を、という原則は20才の新入社員だって知っているはず。
なのに、なぜそれが出来ないのか、どうしたらそれが出来るようになるのかを考え、日頃から手を打っておかねばならない。他山の石としたい。

さてあなたの会社では悪いニュース、良いニュース問わず、組織のトップ(社長)に速やかに入ってきているだろうか。

たとえば、幹部社員の息子さんが高校受験に成功した。そんなうれしいニュースが社長の耳に入ってきているか、ということだ。

「業績は良い。だが、理想の会社にはほど遠い」と感じていたK株式会社のI社長(45才)。

ちょっと小太りの彼が8年前に作った人材派遣業のK社は、彼の手腕のたしかさと、愛知県製造業界の好調さも追い風となり、7期連続で増収増益を遂げてきた。
本社スタッフ30名、派遣スタッフは200名を超える規模になり、今後の経営環境も良好だという。

そんなI社長なのに、「理想の会社にほど遠い」と感じてきたのはなぜか。理由を聞いてみると、こんな言葉が返ってきた。

「仕事の忙しさのせいもあるが、社内の人間関係がギスギスしていた」

朝晩の挨拶が通りいっぺんで心がこもっていない。社内の会話もメールが中心で、会話は最小限しか交わされない。
古参社員の息子さんが志望高に合格したのに、そのニュースをほとんどの社員が知らない。だれひとり「おめでとう」を言ってあげられない。

「どうしたらもっと明るくて爽やかな会話がある社風にできるだろうか」と思ってきたI社長は研究を重ね、いろいろな取り組みを行った。
マナーの先生にも来てもらった。ものすごく元気な朝礼をやる会社を見学してきた。賞与を現金支給にした。社員のお誕生会もやった。

いろいろやってきたが、最近の「ありがとう運動」は、いずれにも勝る大ヒットだという。

名刺サイズのカードに「ありがとう」とタイトルが付いている。その「ありがとうカード」を各自が100枚もち、うれしいと思ったことを書いて相手に渡す。
なるべく事実に基づいてカードに記入する。本人に手渡しするのが基本だが、恥ずかしい人は机に置いておくことも許す。

カードを百枚使い切ったら新たに百枚支給する。そのときには千円の図書券も付いてくる。
運動を開始して2ヶ月後、「ありがとうカード」が職場内を飛び交うようになった。みな、真剣に「ありがとうネタ」を探すようになった。
他人の良い点・素晴らしい点をさがす訓練にもなっていった。
それに比例するように、業績もグングンうなぎのぼりに上がりだした。

会話が活発になった。社員と社長の顔に精気がでてきた。
I社長は、社内で飛び交った「ありがとうカード」を回収し、ありがとうだらけの社員ハンドブックを作ろうとしている。
タイトルは、「ありがとう」だという。