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数字に目覚める

「こんな会社でコンサルをお願いするなんて前代未聞でしょうね?」とA社長。

彼女の会社は設立二年目で、社員が数名の広告代理店。初対面の名刺交換が終わるや否や、初年度の決算書を見せられた。

「あれ、現預金が65万円しかないぞ」というのが第一印象。
第二印象は、「借金も100万円ほどある」。
公庫融資のお金を含めて資本金300万円で作った会社の資産がすでに吹っ飛んでしまったようだ。

友人の紹介で私を知ったという彼女は、こう言った。

「うちは営業力には自信がある。デザイン力だって企画力だってどこにも負けない。ただ、管理力とか経営力とかなると、誰一人できる人がいない。納期遅れはよくやるし、代金の未回収があっても誰も督促しない。このままでは会社はつぶれるかも。どこから手を付けてよいのか分からないので手伝ってもらえないだろうか」

A社長は一人で仕事を抱え込みすぎて混乱しているようだった。
帳簿上は毎月黒字なのに現金残高が減ってゆく。ついに現預金が65万円しかないというのに、月額10万円のコンサルタントを雇おうというのはたしかに勇気ある決断だろう。

決算書を拝見したあと、彼女たちが実際にやっている仕事を見学し、ミーティングにも参加した私は、「この会社はイケル」と感じた。優良な客先が多いし、女性中心の社内は明るくて活気がある。

私は引き受けようと思った。

ただし、A社長に頼られすぎては困るので、あえて無理難題を突きつけ、彼女の覚悟を確認した。

1.増資または社長による融資で資金難を解消すること。
2.売り掛け債権のチェックをし、不良債権がないか点検すること。
優良債権のなかで回収モレはいち早く回収を済ますこと。
3.社長は決算書の見方に関する本を一冊読み、自社の決算書を自分で分析できるようになること(一ヶ月以内に)

「わかったわ。やってみる」
A社長の行動は素早かった。A社長は翌日、私のオフィスに200万円を超える現金をもって現れた。

私にくれるのかと思い、一瞬身構えた。
だがA社長いわく、

「このうち、150万円は私の持参金。来年結婚しようと思っているの。そのために取っておいたファイナルマネーってわけ。これを会社に融資するわ」

残りの50万円は、売り掛けの回収だという。昨夜、客先の社長の自宅と携帯にまで電話して未収金の督促をして、今朝、銀行の帰り道に回収してきたという。

そして、この日から武沢の推薦図書『野望と先見の社長学』を読んでA社長は、がぜん、経営数字に興味をもった。

数字を押さえた経営をするというのがどういうことなのか、A社長は理解した。そして、この会社、18ヶ月後には現預金残高が1,000万円を超え、借金はゼロになった。

その年、私はメルマガをスタートし、顧問先を持たないことにしたが、今でも時々A社長から近況メールが明るく届く。
きちんと数字を押さえた社長は、たとえ苦境があってもそれを乗り越えるすべを知っている。数字を押さえるということは、もはや知識というより武器なのである。

さて、先週の「がんばれ社長!アンケート」のテーマは『社長と決算書』。

集計結果が出たのでご報告したい。 回答総数83名

1.あなたは決算書が読めますか?
はい        60名(72%)
いいえ       5名( 6%)
どちらとも言えない 18名(22%)

<武沢>「読める」という方が私の予想より少々多かったです。
中には、損益だけ読めるとか、部分的に読めるという意見も含まれているのかも知れませんね。

2.あなたは月次試算表を経営判断の材料にしていますか?

ものすごくしている 37名(45%)
部分的にしている  36名(43%)
ほとんどしていない  6名( 7%)
まったくしていない 4名( 5%)

<武沢>88%の経営者が決算書を判断材料に使っているということ。
この数字も私の実感より10~20ポイントくらい高い比率でしたので、ちょっと驚きです。

3.あなたの会社では締日から何日以内に試算表ができますか?

締日の翌日には試算表が出る 7名( 8%)
三日以内に出る       15名(18%)
一週間以内に出る      19名(23%)
二週間以内に出る      18名(22%)
一ヶ月以内に出る      12名(14%)
一ヶ月以上かかる       5名( 6%)
月次試算表は作っていない 7名( 8%)

<武沢>おおむね、翌月7日~10日あたりが平均的なところ。翌日に出ている、という会社が8%もあるのですね。

4.試算表を誰に見せますか?

自分しか見ない           25名(30%)
経営陣しか見せない         26名(31%)
管理職以上に見せる          18名(22%)
ほぼ全社員に見せる          9名(11%)
社内だけでなく、外部にも公表している 5名( 6%)

<武沢>決算書を生のまま見せても社員は分からない、ということかもしれませんが、できれば、決算数字をもとにした月例経営報告会を開催するなどして、数字を社内共有していきませんか。

5.決算書が読めるように勉強した経験は?

ある        65名(78%)
ない        9名(11%)
どちらとも言えない 9名(11%)

<武沢>勉強したから読めるようになった。勉強していないと読めないという、当然の因果関係がでました。中には、決算書も眺めていたら分かるようになる、というご意見もありましたが、決算書は絵画ではないと思います。

6.もっと決算書の見方や分析法について詳しくなりたいですか?

ものすごくその必要性を感じる     48名(58%)
時々そう感じるが優先順位は高くない  27名(33%)
あまりそう思わない          7名( 8%)
まったくそう思わない         1名( 1%)

<武沢>最近はわかりやすい本や教材がたくさん出ていますから、時間と費用をご自分にかけて勉強しましょう。
ものすごく見返りの大きい投資だと思います。

その他、自由意見欄に寄せられたご意見の数々は、明日、ご紹介します。