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退職ダメージ

行きつけの理髪店で、いつも私の担当をしてくれていたT君が退職した。ちょっと気になっていたら、それから間もなくしてT君からハガキが届いた。念願かなって理美容店をオープンしたという。さっそく出向いてみてビックリ。“長蛇の列”とは言わないが、それに近いほど待合室は満室状態なのだ。T君は、カリスマ理容師といえるほどの人気者だったのだ。

T君に話しかけてみると、オープン4日間ずっとこんな調子でフル稼働だという。私はやむなく、いつもの理髪店に行ってみたが、案の定、こちらはヒマそうな雰囲気だ。カットしてもらいながら、次のようなことを考えていた。

・T君がもしどこかの販売会社の営業マンだったら、ごっそりお客さんを取られた格好なのだろうな。
・人間としてはおめでたい独立開業も、企業としてみると痛手以外の何ものでもない。いや、時と場合によっては喧嘩別れになる こともある。
・企業として、T君の独立という行為を止めることは出来ない。しかし、お客をごっそり取られるというダメージを減らすことは 出来ないものだろうか。

あなたの会社では、このT君のようなケースは起こる心配がないだろうか。いわゆる社員の“退職ダメージ”だ。

なじみのファミレスで働く店員さんが退職してもその後を追うことはしない。本屋の店長が独立しても後を追わない。その立地やサービスが第一の利用目的であって、そこで働く人というのは第二義的なとき、お客は付いていかない。しかし、困ったことに多くの場合、人が二義的だと断定できる業種のほうが少ないのが実態ではないだろうか。

社員を育て、社員と顧客との関係を太くすればするほど、“退職ダメージ”という企業リスクは高まっていくのである。これは相当悩ましい問題だ。