若者は日に日に成長するから久しぶりに再会すると大化けしていることも珍しくない。
時には、中高年になってからでも、いや、老年になってでも、化けることがある。きっかけと意欲があれば、人間は何度でも化けられるようだ。
愛知中小企業家同友会のK社長は最近、大化けした。
年令はおそらく42才くらいの男性。
いわゆる学校エリートで、見るからにIQが高そうな顔立ちをしておられる。長身でハンサムなので女性からも人気がありそうだ。
大手ゼネコンで長年勤務し、昨年起業し、株式会社の社長になった。
とは言っても迷いながらの起業で、従業員は自分とパートだけ。
そんなKさんが起業2年目の今年春、私が講師をつとめる愛知中小企業家同友会の「経営指針講座」に参加された。
建築ビジネスには詳しいが、会社経営はやったことがない。基礎から経営の勉強をしながら、自社の計画を作ろうと思い、同友会入会と同時にこの講座に参加することを決めた。
Kさんは結局、春講座(5月~8月)を一日も休まず受講し、オプションのサマー合宿まで参加したが、納得できる計画書が作れなかったという。
「着いていくのに精一杯でじっくり計画を練る余裕などなかった」と彼はいう。
武沢から修了証書は受け取ったが、その場で、「武沢さん、私は秋講座も受けます」と宣言し、11月からの秋講座に通い始めた。
秋講座も7回の通い講座で、3回目の講座が終わったばかりの一昨日、皆で忘年会を行った。
Kさんが私の隣へやってきて一冊のバインダーを手渡しながら「見てほしい」という。A4サイズのクリアファイルに30ページ程度のボリュームの経営指針書がすでに完成していた。
「特別に武沢さん用に作ったのでお渡ししたい。そして感想が聞きたい」という。
「よくこれだけの期間にこれだけの詳細なものが出来ましたね。じっくり見させてもらいます」と言い、カバンにしまいこんだ。
話は少々それるが、「経営指針講座」について触れておこう。
愛知中小企業家同友会でこの12年間講師を務めている「経営指針講座」は、春と秋の年二回、それぞれ7回通い講座で行っている。
経営マニフェスト、つまり自社の5カ年発展計画と長期ビジョン作りを行う講座で、毎回30名の定員は満席になる。
7回の講座では、次のようなことを勉強しながら計画作りを行う。
1.経営理念と長期ビジョンの制定
2.経営方針の策定(理念とビジョンを実現するための具体策立案)
3.決算書の見方解説、自社の財務分析5カ年収益倍増計画作り(倍増を押しつける訳ではないが、少なくともそれくらい、いや、それ以上の勢いはほしいから)
4.マーケティング計画の立案(お客をどうやって作るのか計画する)
5.内部管理体制の確立(人と組織と仕組みを作ることで、安定した収益体制と、計画経営の仕組みを作る)
6.方針書の発表の仕方と、進捗チェック体制の構築社長自身の学習計画と生活習慣・勤務週間の改善計画
7.一枚のサマリー(概要書)にまとめる相互発表会(サマリーを配布しあい、一社数分程度で発表)
毎回、午後6時半から9時まで。半分は私の講義で、のこり半分は各自の計画作りとグループ内発表、討議に当てられる。
毎回、1~2個程度の宿題が出るので、それをやってこれば、講座が修了する時には立派な方針書が完成し、堂々と人前でそれを発表できるようになっている、という具合だ。
ちなみに、この「経営指針講座」の内容を元にした経営講座を来年2月以降、東京・名古屋・大阪などの主要都市でも開催する。
ご興味があれば、あなたにも受講をおすすめしたい。
平日の午後を利用した「がんばれ社長!経営ゼミ」と、一泊二日型の「経営マニフェスト成文化合宿」を開催予定。
受講者限定で、個別経営相談にも応じてサポートしていきたいと考えている。今年中にも募集を開始する予定。
さて、先のKさんが作った方針書を昨日読んだ私は、うなり声を発してしまった。
初受講の一回目とは別社長の別会社のような計画がそこにあった。
力強くて簡潔な文章表現と見やすい数表、グラフ、図形を織り交ぜた美しいカラーと携帯しやすい装丁、とても良くできている。
もちろん、計画の内容も充実している。
「Kさん、計画書の見た目はもちろんのこと、内容の濃さにも感動しました。よく短期間でこれだけの計画をお作りになったものと、尊敬します。あなたの計画書を人々に見せびらかしたいほどです」というメールをKさんに昨夜、送ったところだ。
中高年になってからでも、自分に直面する人は化ける。