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決算への志

粗利益確保と粗利益配分が社長の仕事だ。

粗利益確保するためには、付加価値を高めることである。

たとえば、飲料メーカーから一本90円で仕入れているペットボトル茶に付加価値を付ければ、あなたは一本150円でお客にそれを販売できる。
お客の誰一人として自分も一本90円で買って飲みたいとは思わない。
なぜなら、あなたに付加価値があるからだ。

この場合の付加価値とは、

・一本単位のバラ売りに対応している(メーカーはケース単位)
・冷やしたり暖めたりして飲み頃の温度で提供する(メーカーは常温でしか出荷してくれない)
・年中無休24時間買える(メーカーは週末休みで平日も午後6時までで営業が終わる)

このようにして、あなたの会社が存在することによって価値が付加されるから付加価値というし、その金額が付加価値高、別名、粗利益高という。

だが、ペットボトル茶を売っているのはあなたの会社だけではない。
他にも同様の付加価値を提供している同業他社があるので、その競争環境の中で付加価値高が増加したり、減少したりする。
さあ、そこで過去3年間の決算書を脇に置いて、自社の売上、粗利益の推移を一覧表にまとめてみよう。

一目瞭然で我が社の付加価値がお客にどう評価されているかが分かる。
決算書とは、お客が付けた通知表であると言われるゆえんだ。

次に、稼いだ付加価値を適切に配分しているか否かをチェックしよう。付加価値、つまり粗利益の金額を100%として、木の幹とする。
その幹を枝と根っこに配分するわけだ。

根っことは、純利益(税引き後当期利益)を指す。
一方、枝とは、使ったお金のことを指す。枝は次のように7つに分かれる。

・「人件費」という枝(社員の給料、賞与、雑給、退職金、福利厚生、法定福利)
・「役員報酬」という枝(常勤役員の給料、福利厚生、法定福利)
・「金融費」という枝(銀行借り入れの利息のこと)
・「償却」という枝(減価償却費のこと)
・「安全」という枝(各種引当金のこと)
・「社会」という枝(法人税、消費税、法人住民税、事業税のこと)
・「一般経費」という枝(上記以外の固定費のこと)

粗利益である「幹」の100%が、以上の7つの「枝」と「根っこ」に分配されるわけだ。

問題は、どの程度の比率で配分すれば良いのか、である。
目安ではあるが、次の数字を意識していただきたい。

・「根っこ」10%
・「社会」10% (税引前利益の半分が納税、半分が純利益と考えるから)
・「人件費」50%
・「役員報酬」10%
規模や業態によっても大きく異なるが、社員の人件費と役員報酬の合計が粗利益の60%未満に収まっていればOK。
・「金融費」3%未満
・「償却」5%未満 装置産業の場合は、あえて10%程度まで使う場合もある。
・「安全」3%未満
・「一般経費」9%

となる。

製造業、建設業などでは、社員の労務費や機械の償却費用、現場経費などを「売上原価」に入れているケースが多い。
その場合は、「売上原価」から固定費の方に費用を移動して再計算してみてほしい。

さて、粗利益を100として見た場合、我社では上記の「枝」や「根っこ」に何パーセント配分してきているのかを過去三年分の実績推移表で見てみよう。

そして今後の5カ年計画において、どのような枝ぶりにするか、根の張り方をどうするのかを決めていただきたい。

5カ年計画では、配分比率を先に決める。あとは粗利益や売上高の絶対金額を決めれば、自動的に枝と根っこの金額が計算されるのだ。

この魔法の黄金比率に近づくような会社にしていこう。すでにこの水準に達している会社は、さらに上を目指そう。

よい決算書とは、優れた盆栽のように枝と根っこのバランスが絶妙な芸術なのだ。
それは社長の財務に対する志の有無によって決まっていく。

参考:野望と先見の社長学
http://www.jmca.net/books/yabou/ad.php?&id=129