運動不足を解消するためエクササイズを開始した。そのコーチが面白いことを教えてくれた。
「武沢さん、腹筋を鍛えたいそうですね。」
「ええ、せめて腹筋があるということを人に見せたいですね。」
「その前に、まず筋肉というものがどんなものかご存知ですか?」
「筋肉? う~ん、牛肉でいえば白い部分が脂肪で赤い部分が筋肉?」
「そうですね、実は筋肉というのはその名の通り、細い筋の集合体なのですよ。『筋線維』と書きますけどね。その筋線維は、たんぱく質から出来ていて、それが何本か束ねられたものが筋肉だとご理解下さい。」
「そうなんですか、知らなかった。ということは、腹筋を鍛える場合には、腹回りの筋線維を増やすことになるのですね。」
「いえ、筋線維の本数は一定なので、増えることはありません。トレーニングによって鍛えることで、筋線維一本あたりの太さを太くしてあげるのです。」
「へー、勉強になりました。なるべく一生懸命通いますね。」
「そうして下さい。でもスーカー・リカバリーのことも知っておいて下さいね。『super revovery(超回復)』のメカニズムをご存じないとがんばり過ぎて、逆効果になることもあります。」
「スーパー・リカバリー? それってゴルフ用語じゃないよね?」
『スーパー・リカバリー(超回復)』とは、次のようなものだ。
トレーニングなどで強い負荷をかけると、筋線維は傷害を受ける。その結果、筋肉痛や炎症、ひどい場合には肉離れという筋断裂もおきる。また自覚症状がまったくない場合でも、トレーニング後には必ず筋線維にはダメージがあるという。そのダメージも、体内のたんぱく質を材料に修復されるとき、普通は傷つく前よりも筋線維が太くなるというのだ。この現象を『スーパー・リカバリー』という。
『スーパー・リカバリー』を発生させるためには、通常1~2日の休養が必要となる。それを知らずに毎日同じ部位を鍛え続けると逆効果になる場合もあるというのだ。
関連サイト: http://www.cramer.co.jp/training/rest/chokaifuku3.html
さてこの話、肉体トレーニングだけの話ではないはずだ。頭脳や精神にも同様のメカニズムが働いていると考えた方が自然だ。また、企業という組織にも『スーパー・リカバリー』が当てはまる。
私たちの才能や能力・精神力も、筋線維みたいなものかも知れないのだ。何度も何度もくり返しくり返し、鍛えてあげる。筋肉痛や炎症になるほどにダメージを与え、鍛えてあげる。鍛えるとは何を意味するか。それは、負荷をかけることであり、挑戦することである。
たんぱく質という栄養素と休養という時間を与えることで『スーパー・リカバリー』がおきる。前よりもずっと太い筋線維になっている。先週は30回しか出来なかった腹筋が、今週は50回できる。
その間に、肉体にはたんぱく質という栄養が必要であったように、我々の才能や能力にとっては、教育という栄養が必要だろう。
挑戦によって鍛え、教育によって栄養をとり、ときどき休養する。このくり返しによって私たち人間は、『スーパー・リカバリー』し続け、進化していくのだ。