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組織の活力はまずここから

Rewrite:2014年3月20日(木)

「うちの専務が最近、部下たちから見放されて孤立している。至急、相談したい」という連絡があった。お会いして事情を聞くと、専務は創業以来のメンバーで出資者(株主)でもあるという。システム開発のこの会社で、開発全体を指揮するリーダー役でもある。年令は45才だそうだ。

根ほり葉ほりうかがえば、会社設立以来20年近くもの間この専務には、ある開発言語を使ってもらってきた。しかし最近、この言語が主流から外れてきた。ピーク時には20人近くいた専務直轄の部下も、今では4人。専務とは名ばかりで、社長にとって頭痛のタネになっているという。かといって、他のコンピュータ言語を今からマスターさせるのは困難らしく、営業ができるわけでもない。まるで陸の孤島のような存在だという。

こうした話は結構多い。
営業しかできない、設計しかできない、○○しかできない、という社員をよくお見受けする。環境の変化に対応できない社員が社内に、しかもかなり上層部に多いのはどうしたわけだろうか。

官庁に勤める友人に聞くと、エリートほどジョブローテーション(人事異動)は活発で、平均すると18ヶ月サイクルで職務が変わっていく。エリート路線から外れると異動のサイクルがとたんに鈍る。どうやら自然の摂理で、人間は新しい環境におかれると必死にそれに適応しようとして能力を発揮し、成長する。同じような環境に長年いると能力は退化し、成長も止まる。ビジネスの世界で成長が止まることは即ち、死を意味する。

製造業では古くから「多能工社員」の育成に取り組んできた。旋盤もできるし、ボール盤もできるという意味での多能工だ。しかし、こうした多能工ではなく、それをさらに発展させた「マルチスペシャリスト(複数部門の専門家)」の育成が欠かせない。大企業ならいざ知らず、中小企業では一人一役では話にならない。

そのためには、思い切った人事異動が必要である。若いうちは、営業成績がトップの人材を人事や経理に回すなどという芸当もときには必要だ。
「うちの社員は勉強しなくて困る」という会社ほど、人事異動がとぼしいことが多い。
部署が変わる、部下が替わる、上司が替わる、客先が替わる、職務が替わる、とになく何か「替える」ということが新しい成長に向けたダイナミズムを生み出すことが多い。全社一斉に替えると混乱するので、決算期や半期のたびに組織のどこかをかきまわしていこう。