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リーダーシップは社長の責任

「武沢さん、社長に就任して分かったことなのですが・・」とA社長。彼は先月、父親からバトンタッチされて社長に就任したばかりの新社長なのですが、続きの発言がこちら。

「社長業って、部門間の利害調整や意見調整が結構大変なんですねえ」

私は「へぇ、そうなんですか」と言いながらもその発言に違和感を感じた。

社長はリーダー。マネジャーではない。
リーダーとは、文字通り組織を目的に向かってリードする人のことだ。
そのためには、日頃からリーダーシップを発揮しやすい組織や環境、風土を作っていく必要がある。

常日頃の社内の人間関係がとても大切であって、何気ない会話のやりとりや決断の中にリーダーシップ発揮の土壌ができていくのだ。

私はドラッカー教授が書いた次の一節を思い出す。

・・・
私が知っているなかで最もよい人間関係をもっていた者はだれかを問われるならば、次の3人をあげる。第二次大戦中のマーシャル将軍、1920年~1950年代半ばにGMのトップを務めたアルフレッド・スローン、スローンの年上の部下で不況のさなかにキャデラックを豪華車として成功させたニコラス・ドライスタットの3人である。
彼ら3人は、これ以上違いようがないほど違っていた。
(中略)
その彼らが3人とも、同じように部下たちから深い献身と愛情をもたれていた。3人とも、それぞれの仕方で、上司・部下・同僚との関係を築いていた。3人とも、仕事の必要上、多くの人たちと密接な関係をもって働き、気を配った。
もちろん3人とも、人事については厳しい意思決定を行わなければならなかった。しかし、彼らのうちの一人として、人間関係に悩むことはなかった。彼らは、人間関係を当たり前のこととしていた。
・・・

※ドラッカー著『経営者の条件』より

社長は、社内の人間関係のストレスを当然のことと受け止める必要がある。

辛い決定、厳しい決断も必要だろう。しかし、だからと言って判断をゆがめたり、決断を鈍らせることは避けねばならない。
組織全体を考えた意思決定をする必要がある。誰かを思いやって落ち込んだり、悩んだりする必要はまったくない。なぜなら、それこそがリーダーの仕事なのだから。

とりわけ中小企業経営においては、大企業ではマネできないような俊敏な経営が武器である。俊敏さは、社長の強いリーダーシップを必要とするのだ。

そのためには、社長の思い通りに一糸乱れぬ動きをする組織を作っていこう。思いきりワガママになって、社長の好きな部下と仕事をして、社長が望むように働いてもらい、社長が望むような結果を出せるようにしていこう。

決して社内に嫌いな人がいてはいけない。

もし、部下の中に「あの社員は嫌いなのだけど、仕事ができるので我慢して使っている」という人がいたら、やがて、社長自身のリーダーシップに蔭りが出始めてしまう。社長自身のテンションだって上がらなくなるだろう。

だから、嫌いな人は雇うべきではないのだ。

もう一度申し上げる。

社長はリーダーシップを発揮しよう。それが可能な組織を日頃からワガママになって作っていこう。それこそが社長の仕事、社長の責任なのだから。