おもちゃ売り場へ向かって一目散に駆ける子ども。
場内の指定席券をもっていながらも、球場駅から降りてつい足早になってお父さんの手を引っ張る野球少年。
親に怪獣映画に連れて行ってもらえる前夜、興奮して眠れない子ども。
いずれもが無邪気で純真だ。
映画撮影の現場が始まったときの黒澤明監督も、そうした少年と同じような無邪気さで、ご機嫌だったという。
大人になっても子どものような純真さで仕事ができるなんて幸せだ。
やっぱり、大好きな仕事を本職にするということは大切なことなのだと改めて思う。
80才になったとき、ハリウッドのアカデミー「名誉賞」を受賞し、「映画のことは、まだよく分からない」とスピーチした黒澤監督。
納得のいく作品を追求してはいても、全編を通して “これが映画だ”、と胸を張れる作品はまだできていない、という正直な気持ちの表れだろう。
「監督の入りをユックリにしてください」と撮影スタッフが黒澤の家族に頼んでおいたにもかかわらず、早く現場に行きたい本人を引き止めておくのは至難のワザだった。
黒澤の長女・和子さんが『黒澤明「生きる」言葉』でそう述懐している。
和子さんのこの本には、黒澤明監督の家人でしか書けない素顔やエピソードがふんだんにある。その中には、経営やビジネスに通ずるヒントも多数ある。印象的な箇所を拾ってみた。
1.「画コンテは、スタッフに的確に伝達する以上の効果がある」
簡単な画コンテは昔から描いてきたが、丹念なカラー画コンテを描き出したのは「影武者」から。「影武者」の資金調達に時間がかかり、この作品も日の目を見ないもと、せめて紙の上にだけでもイメージを定着させておこうと書き始めたもの。
映画化が決まったころには、相当数の画コンテができあがっていた。
黒澤監督は、「スタッフにも評判が良かったけど、何より自分のためになった。画面に映る全て一つ一つのものが具体的に自分の中で見えていないと描けないんだ」と語っていたという。
2.「やる気が起こらない、サボりたい、なんて誰でも思うことさ」
サボり癖の人がいる。やる気が起きなくて会社に行きたくない朝だってひんぱんにある。
それは、やっている仕事が間違っているからそうなるのではなく、あの黒澤明監督だってそうなのだと知ると、なぜかうれしくなる。
「ロケ先の宿屋で朝起きるとカーテンから首を出して “雨降ってたらいいな” なんてしょっちゅう思うよ。でも否が応でも現場に行けば、夢中になっちゃう、そんなもんだよ」と語っていたという。
自分自身がいやにならずに良い仕事が出来る状態を保つ工夫もプロフェッショナルの仕事の一部のようだ。
ゴールデンウィークの旅行カバンに忍ばせておくのに最適の一冊
『黒澤明「生きる」言葉』
ちなみに、黒澤監督の画コンテはこちらのサイトでご覧いただけるし、購入も可能だ。マニア垂涎のグッズも多い↓
黒澤明 絵コンテの世界 http://www.kurosawa-drawings.com/
また、黒澤監督の作品をテーマにしたレストランはこちら↓
私も何度かおじゃましたが、料理も雰囲気もすばらしく、外国からの要人客も多い。
食文化総研 http://www.9638.net/index.html
最後に、黒澤明監督ご本人についてはこちらが詳しい
ウィキペディア「黒澤明」↓
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%BB%92%E6%BE%A4%E6%98%8E