経営計画書で掲げた業績目標を下回ってしまう会社が多い中、反対に上ぶれする会社がある。ヒット商品を抱えていたり、商品開発やメニュー開発がうまくいった場合や、新事業参入・業態変更などの場合にもそうなる可能性がある。
なかには何も変わっていないのに、ひとりのリーダーが立ち上がることで業績が急伸することがある。いつも目標未達成で悩んできた社長が、昨年暮れに幹部合宿を開催した。幹部たちとはノミニケーションはやってきていたが、とことん腹を割った話し合いをしてきていないことを反省した。富士山と太平洋が見える快適な場所で二泊三日の合宿研修をすることにしたのだ。
まず最初は、部下たちが一番話しやすそうなテーマを選んだ。それは「わが社の問題はなにか?」だった。ポストイットに各自の考えを書き出してもらい、それを模造紙にテーマ別に分類して貼り付けた。問題の総数は203個あった。そのうち、社員の待遇に関する不満が2割を占めていた。初日はそれだけで会議を終えた。
二日目はその問題リストのうち早急に解決せねばならない優先事項を話し合った。そのためには会社の実情(決算書)を洗いざらい説明する必要もあった。意外に会社に余裕がないことに幹部は驚いた。
社長は、営業利益を超過した分の4分の1を社員に還元することを約束した。利益の半分は税金で、半分の半分は会社に蓄積するという配分ルールにした。そして、毎月の営業利益を超えた部分は1/4を別口座に入れて3月と9月に社員に支給するというルールをつくった。
また、自分たちの給料やボーナスを決めるのは自分たちであるということを幹部諸氏に心から理解してもらった。そして今期は幾らの売上目標に挑戦するかを皆で話し合って決めた。それは15億円という売上目標だった。前期実績は11億円で、社長としては13億に挑みたいと内心で思っていた。それを上回る目標値が幹部たちによって作られた。
「社長の腹づもりは何億だったのですか?」と幹部の一人が聞いた。「まあいいセンだ」と社長は答えたが、合宿で2億円の上ぶれをするのであれば、一人8万円(×5人)の合宿費も安いものだと思った。
こういうプロセスを経た会社は社員が業績を牽引する。社長ひとりで牽引している会社よりもこういう会社の方が達成しやすいのだと思う。