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稚心を去る

「稚心(ちしん)を去れ」と自分に言い聞かせたのは 15歳のころの橋本左内。プロとアマの差を生むのは「稚心」があるか否かによることが多い。

「グチを聞いて欲しい」のか、それとも「問題を解決するための助言が欲しい」のか、どちらをお望みなのだろう?と思うことがある。結局、両方なのかもしれない。経営相談のためにご用意した時間の大半をグチと状況説明に費やす社長がおられる。もったいないとは思うが、とにかく最後までお聞きする。きっと今までは誰かに話を中断させられたのだろう。私はさえぎらない主義でいく。すると、社長の話もいつかは終わり、ずいぶんスッキリした表情になられる。

「なるほど。それは大変ですねぇ。で、今後どうします?」とお聞きすると社長の多くはすでに何らかの回答を持っている。ただ決断と覚悟が定まっていないだけのことが多いのだ。

・本当にそんな改革ができるだろうか
・自分ひとりで社内を納得させられるだろうか
・銀行や株主はどう思うだろうか
・社内の抵抗勢力にはどう立ち向かおうか
・本当にこれでいいのだろうか

ときどき 50対 50でどちらにすべきか迷っておられるケースもあるが大抵は答えをひとつに絞っている。あとは第三者に背中をプッシュしてもらいたいというわけだ。

「社長、正しい主張は必ず組織に受け入れられるものです。私もそれが正しい解決策だと思います。迷わず断行しましょう」

すると社長は勇気 100倍で帰って行かれる。そしてうまく行く。

なかには、社長が正しいと信じる主張が通らない会社もある。社長の言葉が軽く扱われる会社もある。それは会社とはいわないし、社長とも呼べない。そんな会社の社長ならば、社長が辞任するか、社員に辞めてもらうかの二つに一つしかない。社長がそれくらいの覚悟でものを語り、行動する。覚悟付きのメッセージは必ず社員に伝わるものである。

「覚悟って何ですか?」と聞く社長もおられる。

覚悟とは、何が起きても人のせいにしないという決心と、自己利益を超えたものを願っていること。私益ではなく公益のためにそれを決めたのであれば、おのずと覚悟が据わるものである。

私益では目がキョロキョロ動くし、突っ込まれるとニヤニヤする。公益を願っていれば 17歳のノーベル平和賞受賞者マララさんのように、年齢に関係なく「稚心」(ちしん)がなくなり大人びるものである。

「稚心を去る」とは覚悟を決めて生きるということでもある。