「三人の看護士に体毛を剃られた」と、こぼしながら知人が盲腸手術を終えて退院してきた。
彼の入院は、わずか一週間。それでも廊下を歩く時には手すりを頼りにしないと心細いくらいに、下半身の筋力の衰えを感じたそうだ。
わずかな期間といえども、筋肉を使わないで放置すれば、そこが一気に弱くなることを自覚したという。
私たちの身体の細胞はすべて、栄養と運動によって培われている証拠だ。
頭脳だって同じ細胞のかたまりだ。使ってやらないと衰える。
特に、今までたくさん頭を使ってきた人がそれをやめたりすると急速に衰えが目立つようになる。
『日経おとなのOFF』2006年10月号に掲載された脳科学の最新常識によれば、年をとることと脳が衰えることとは関係がないという。
それどころか、脳細胞は年令に関係なく生まれることも判明している。
昔は、「毎日大量の脳細胞が死滅し増えることはない」と教えられたが、いつのまにかその常識は古いものになっていたのだ。
同誌によれば、脳の老化を防ぎ、若返らせるためのポイントは3つ。
一つは前頭葉を鍛えること。脳トレゲームが良いと紹介されているが、私は脳トレゲームより読書だと思う。読みやすい本ばかりを読むのでなく、たくさんの人物が登場する歴史小説を読むことや、新しい語学に挑むこと、新しい趣味をもつことなども前頭葉を鍛えることにつながると思う。
二つめは、栄養補給だそうだ。
和食中心の規則正しい生活が望ましいが、仮に不規則であったとしても和食を心がけ、肥満や過食を防ぐだけでも脳の栄養補給という面では効果が高いという。
三つめは、適度な運動。
ダイエット目的の運動というよりは、身体の細胞を使うことによって脳との関係を円滑に保てる効果があるという。従って、運動は脳のためでもあるのだ。
経営者の脳は若くなくてはならない。肉体年令は高齢であったとしても脳の年令は新入社員よりも若くなくてはならない。
そしてそれは可能なのだ。
金曜日号でご紹介したOさんもiPod徒歩通勤によって身体と脳を鍛えることによって会社も鍛えることができるという証人なのである。