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社長だから正しい

ある美容室の女性経営者から相談を受けた。
「社内の人間関係がうまくいっていないので、一度ミーティングの様子を見にきてほしい」という要請だ。

約束の日時にお店に行ってみると、いきなり店の奧からけんか腰のやりとりが聞こえてきた。どうやら私の入店に気づいていない様子だ。

「ちょっとあなた、さっきから聞いてると何様のつもり?社長は誰だと思ってるの。あなたじゃなくて私なのよ」
「はぁ~っ!? わかってますよ、そんなこと」
「だったら社長に対する口のききかたってものがあるでしょうよ」
「社長社長って社長風をふかさないでください。私は自分の気持ちを正直にしゃべっただけですから」
「私が社長として最終的に決めたことですから守ってもらいます」
「あそうですか。今日はこれで帰ります」
「ちょっと、今からみんなでミーティングよ。コンサルタントの先生もお呼びしてあるんだから」
「私には関係ありません。失礼します」
「・・・・・」

結局この日のミーティングは中止され、このスタッフはこれをかぎりに退職した。

「お客さまの美しさと笑顔が私たちの喜びです。私たちはお客さまのために専門的サービスを提供するプロフェッショナル集団です」

を経営理念として掲げるこの会社だが、お店の運営に関しては意見の衝突がしばしばあるという。

この日のトラブルもお客に対してシャンプーなどの商品販売のノルマを課そうとする社長と、それをこばむスタッフとの対立だったという。

衆議独裁・・全員の意見をもとめ議論を尽くすが、最終的に意志決定するのは一人の経営者、という意味だ。
会議やミーティングの場で全員の意見をひとつにまとめようとしていては時間ばかりがかかってしまう。だから、私も衆議独裁で構わないと思う。

だが、「私が社長なのよ」という発言とスタンスには問題があると思う。それでは人はついてこない。

社長であるという事実はスタッフ全員が知っている。そんなことが問題なのではない。大切なことは、

「誰が正しいか、ではなく、何が正しいか」

である。

社長だから、役員だから、スタッフだから、アルバイトだから・・
という立場の違いを持ちだすようではいけない。それを論じはじめてしまうと、「誰が正しいか、誰が間違っているか」といった対立構造を浮き彫りにするだけだ。

むしろ、「経営理念や企業目標と照らし合わせたとき、何が正しいのか」を皆で論じようではないか。すると皆の意識と顔が同じ方向を向き出す。

・私が社長だ
・私の言うことが聞けないのか
・私が全面的に信用できないのなら、去って良い

などと言ってはならないし、そう思うことも間違っている。

・我々にとって何が正しいか
・私たちはどうあるべきか

を社内に問いかけよう。