未分類

経営者のリーダーシップ

ゆうべ「ラブワゴン」というTV番組を見ていたら、男がなぐりあいのケンカをやっていた。事の顛末はこうだ。

周囲には優しくて人気者なのだが恋ができないヒデは、とうとうワゴンに乗って9カ国めに突入してしまった。歴代記録を塗りかえる勢いらしい。
「自分は何をやっているんだろう」と思い悩むヒデ。

そんなある日、ある女性が酒に酔った勢いでこう切り出した。
「ヒデはみんなに優しすぎるからダメなんだ」

いきなりのダメだしに8名ほどのパーティの空気が急に凍る。
だが、彼女の発言に相乗りするかのように隣の男性が、「そうだよ、だから9カ国も回ることになるんだ」とダメ押し。逆鱗にふれたのか、笑顔が消え、ぶ然とするヒデ。だが必死に我慢し、一切の言葉を語らずその場を去る。

だが、その後もすったもんだがあった挙げ句、とうとう右フック二発を男性に見舞うヒデ。割って入る空手二段の男。
ラブワゴンならぬ、ケンカワゴンのような番組になってしまった。

私も似た経験がある。二十代の半ば、青年会議所主催の「青年の船」に乗って台湾、香港、中国の廈門(アモイ)を二週間で回る旅に出た。

二十代の男女ばかり数百人が乗り込む。普段とはまったく異なる旅、しかも船という閉ざされた空間と、ずっと海上という特殊な状況の中で男女の愛憎劇が生まれる。
普段冷静な人をも変えるようで、ちょっとしたことで感情的になったり、感傷的になったりする。

そんなとき、リーダーが必要になる。

空気を変えてくれる存在がいるのだ。通常は、声が大きくて明るいキャラクター(個性)の男性である場合が多い。「青年の船」の場合もM君がそんな役柄を引き受けてくれた。問題がおきても、彼の熱心さや人柄によって丸くおさまっていく。

そういうキャラクターの人は通常、部活で主将をやっていたり世話人をやっていた人が多い。

では、そういうキャラの人が優れた企業経営者になれるかというと、そうでもない。
むしろ、自らのキャラクターに依存したリーダーシップだけでは限界があるのが企業経営者という職業なのだ。

先週末の東北非凡会in山形は蔵王麓のロッジで合宿スタイルでの開催となった。その中で次のような質問が出た。

「私は社長ですが、どのような意識や行動で周囲が熱くなるのでしょうか?とくにナンバー2のやる気を引き出そうとしているのですが、今いちです。むしろその部下の方がとても熱い。悩んでしまいます。」


この質問をよ~く見ると、実は二つの問題が隠れている。

ひとつは、社長として周囲をどうやって熱くさせることができるか?という問題。
もうひとつは、その気になってくれないナンバー2の処遇をどうするべきか?という問題。

まず一つめの質問は自らのリーダーシップの問題である。

リーダーシップは「ある・ない」の問題ではないし、「強い・弱い」の問題でもない。段級(だんきゅう)の問題なのだ。ちょうど書道や将棋や空手のように5級なのか、初段なのか6段なのか、という違いがリーダーシップである。

『ビジョナリーカンパニー2 飛躍の法則』のジム・コリンズの節に賛成する。彼の節はこうだ。

リーダーシップはレベル1からレベル5まであるとし、それぞれを次のように定義づけている。

・第一水準・・・有能な個人
    才能、知識、スキル、勤勉さによって生産的な仕事をする

・第二水準・・・組織に貢献する個人
    組織目標の達成のために自分の能力を発揮し、組織のなかで他の人たちとうまく協力する
   
・第三水準・・・有能な管理者
    人と資源を組織化し、決められた目標を効率的に効果的に追求する

・第四水準・・・有能な経営者
    明確で説得力あるビジョンへの支持と、ビジョンの実現に向けた努力を生みだし、これまでより高い水準の業績を達成するよう組織に刺激を与える
    
第五水準・・・第五水準の経営者
    個人としての謙虚さと職業人としての意思の強さという矛盾した性格の組み合わせによって、偉大さを持続できる企業を作り上げる
(『ビジョナリーカンパニー2 飛躍の法則』日経BP刊 31頁より)

明るく元気で声が大きくてみんなから慕われるようなキャラクターは、第三水準までは到達しやすいだろう。だが、第四、第五の水準にいくためには、そのキャラクターを必要としなくなる。むしろ、慕われるキャラクターがアダになることだってあるということを知っておこう。

(明日に続く)