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続・高齢社会対策

「武沢さんは何才まで働きますか?」と聞かれた。「一生働く」と答えると、困った顔をして質問を変えてきた。
「何才までこの会社の社長をやるおつもりですか?」と。
私は、「命ある限りやる」と答えた。

質問者は私の高校の後輩で、個人と法人の保険をすべて任せているM君だ。定期的に保険の見直しをするための質問らしいが、とりあえず、99歳までの定期保険で続行だ。本当は125歳までの定期保険が欲しいが、ないらしい。

私にはモデルがいる。

明治42年(1909年)11月19日生まれの94歳。今なお現役で活躍するビジネスマンだ。いや、活躍なんてもんじゃない。今なお、世界が彼の発言に注目する。もちろん私も大尊敬している。

その名は、ピーター・F・ドラッカー。

和暦で言うと明治生まれ。完全におじいさんか、曾おじいさんの年令だが、そうした老いのにおいを感じさせないのがスゴイ。
ドラッカーとまではいかないにしろ、今後、高齢社会の進行にともなって、高齢者に対するイメージが徐々に変わっていくだろう。

いや、変わっていかなければならない。ヨボヨボのおじいさん・おばあさんばかりの老人国家など誰も見たくない。肉体年令などまったく関係なく、精力的に社会に貢献するようなナイスなミドルやシニアがたくさん街にあふれてほしい。

その責任の大半は本人の自覚にあるのは当然だ。また同時に、企業側にも責任の一端があるだろう。
年齢だけで優秀な人材をお払い箱にしてはならない。たとえ、給料は一律250万円で構わない。年金とあわせれば本人の手取りが400万円になる。老夫婦がやってゆくには充分すぎる給料だ。

入社資格は60歳以上という「株式会社マイスター60」(平野茂夫社長)の会社では、文字通り60歳以上ばかりを採用しているそうだ。
詳細は社長自ら書いた『入社資格は60歳以上』(サンマーク出版)にゆずるが、
「老いとは理想を失ったときにやってくる。決して精神的に老いてはならない」と、論語や大学や武士道などを素読し、精神を啓蒙しあって情熱を保持しているそうだ。

この会社を設立する際、周囲から抵抗があったという。高齢者活用というアイデアはユニークなのだが、本当にやってゆけるのか?という疑問だろう。

平野社長の心には、「やれる・やれないの問題ではなく、これからの日本のために、やらねばならない」という気概が満ちていたことだろう。
「炎を見るだけでボイラーの燃焼温度や排ガスの温度がわかる。モーターの回転音を聞いただけでベアリングの異常を発見できる。六十で定年になったからといって、ベテランたちのこの技術は消えてしまうのか?」

と周囲を口説いたという。

こうした会社が奇異であってはならないはずだ。ごく普通のこととして、高齢者がいつまでも社会に必要とされ続けるような人事制度や企業教育、それに自己育成をやっていこう。

マイスター60 http://www.mystar.co.jp/ms60/
本『入社資格は60歳以上』(サンマーク出版)
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4763195565/