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経営計画書のスケール感

Rewrite:2014年3月22日(土)

毎年 3月と 9月は決算の会社が多く、おのずとこの時機には経営計画発表会が多くなる。新聞の発表では 7割の会社が赤字だそうだが、こうした発表会を毎年行う会社は大半が黒字である。経営計画書の威力がそこにある。

しかし、最近の傾向から気になることもいくつかある。それは、経営計画書がだんだん小粒に感じられるようになってきているのだ。サイズの問題ではない。中味がである。数年前まではどの会社にも、「中長期構想」や「将来ビジョン」などのページがあった。しかし、最近は単年度計画しか作っていない会社が目立つ。したがって社員から「ビジョンがみえない」「夢が感じられない」などの声が懇親会の席で聞かれることもある。

「戦略なき国家は滅びる」といわれるが、企業も同じだ。経営計画書の中に、明確に戦略が明記されていなければならない。中小企業にとっての戦略とは何かということをあらためて考えさせられる。

「戦略」という言葉は本来が軍事用語である。敵が存在し、その敵に対してどのように戦うかを考えるおおもとの作戦を戦略という。したがって、逃げることも戦略、籠城(ろうじょう)作戦で日数をかせぐことも戦略、野戦で真っ向勝負することも戦略、奇襲作戦も和議などの外交交渉も戦略だ。

ちなみに、軍議において布陣を決めたり、戦いの開始時期を決めたりすることを戦術という。敵に対する接し方は多数あるものの、相手の出方に応じて臨機応変に戦略を組み立てる。それでも軍事作戦であるかぎり、比較的しぼられた選択肢から対策を決めることが出来る。

しかし、企業の経営戦略となると、とたんにむずかしい印象になってしまうが実はそうでもない。次の四つのことがきちんと書かれていれば良いのである。

・なぜうちの会社は勝つ必要があるのか(勝ったあとの世界を大義名分で語る)
・なぜうちの会社は勝てるのか(勝ち方の作戦書)
・そのために各部門と社員は何を果たすべきか(実行計画)
・勝ったあとの成果と配分(論功行賞、ろんこう こうしょう)

以上のことが具体的に書いてあれば良いのだから実に簡単なことである。

少しだけ難しくいえば、孫子を知ることであろう。有名な言葉に、「彼を知り己を知らば、百戦殆うからず、彼を知らず己を知らば、一勝一負す。彼も知らず己も知らざれば戦う毎に必ず殆(あや)うし」というのがある。

つまり、敵情を知り、わが力をも知る場合は、戦いに敗れることはない。つまり、敵情とは、経済全体の流れや市場のニーズ、業界の動向、ライバル企業の動きのことだ。そうした外部与件を経営陣全体で共有しておくこと。こうした情報は、新聞やネットなどから入手できるので、その都度切り抜いたりブックマークすれば充分なデータベースになる。

ライバル企業の経営や商品に関する情報は、意識して入手する必要がある。よく観察していくと、売れている商品とそうでない商品が判ってくる。売れている商品は長く売られている商品であり、売れない商品はすぐに消えてしまう。組織図なども入手できれば、ライバル企業が経営上で打つ手も見えてくる。

己を知るとは、内部与件のことだ。人・物・金の状態がどのような競争力をもっているのかを再確認し、経営陣全体で認識を共有することだ。「人」の問題とは、社員の士気や能力をいかに高めるかということである。「物」とは、競争力ある商品やサービスをいかに作るかということだ。「金」とは、必要な資金をいかに調達するかということである。

そうした環境認識のもと、上記の四つのことが社長の言葉で書きつづり、魂をこめてそれを訴えればよい。あとの具体策は幹部以下から知恵が集まるようになるのだ。