Rewrite:2014年3月22日(土)
社長もふくめて社員全員が額に汗して懸命にはたらいているのに利益がでない会社がまだまだ多い。その責任のすべては社長にある。では、社長のどんな能力が足りないからそうなるのか?
ある団体で経営計画書を策定するための年間コースを担当した。
コースに参加された経営者はいずれも中小企業の経営者で、規模や業種、年令もさまざまだが、大半は自社の経営計画をつくるのは始めての方だ。こうしたコースを受け持っていて気づいたのが、その基礎能力の高さである。皆さんきっちりと宿題をこなし、毎回の書式を完成させる熱心さと学習能力を持ち合わせている。また、二次会の居酒屋では、経営の問題ばかりでなく、政治や経済、社会の出来事など豊富な話題で盛り上がる。
つまり社長の経営力の差は、情報収集力や知識の問題ではない。何を知っているかが問題なのではなく、何をしているかが問題なのだ。すでにもっている情報・知識・経験・アイデアを基礎にして、会社全体のビジョンと計画を紙に描ききる能力こそ社長業の本質だ。
しかし、こうした能力は、日常業務ではほとんど使われない。
経営トップにとって、ビジョン策定の技能は、「経営計画策定コース」などという期間限定の場だではなく、日常の場で使える技能にしなければならない。
「トップ本来の仕事は昨日に由来する今日の危機を解決することではなく、今日とは違う明日を創りだすことである」(ドラッカー)
ビジネスピープルに必要な技能を大別すれば、
1.テクニカルスキル(業務遂行能力)
2.ヒューマンスキル(対人関係能力)
3.コンセプチャルスキル(概念構築力)
の3つである。新入社員から中堅社員に求められる技能は、「1」がもっとも大きく、「3」がもっとも低い。一方、経営者は「3」がもっとも大きく「1」がもっとも低い。管理職はその中間だ。このなかで、ビジョンを描く能力は「3」の領域だ。ここは、経営者にもっとも必要な能力であり、代理を務めてくれるスタッフはいない。
「経営とは環境適応業」ということばがあるが、経営環境は毎年・毎月・毎日、かわってゆく。為替や株式のマーケットが世界のどこかで毎秒変化しているように、経営環境も厳密にいえば毎秒変わっていく。同業他社の動向も刻々と変わる。目に見えるものや、数字に表せるものはすべて変わっていく中で、人間の心や原理原則など、変わらないものも存在する。
そうした環境要因にさらされているものが企業であり、そのかじ取りをして持続的成長を図るためには、経営計画策定能力は経営者に不可欠のスキルと言ってよい。しかもこのスキルは、決算期にあわせて年一回だけ使うものではなく、必要に応じていつでも使える能力でなければならない。
そうした能力を身につけることが「環境適応」を可能にする。さらにいえば、積極的にみずからが環境の変化をひきおこす張本人たろうとすれば、「環境適応」が社長の仕事ではなく、「環境創造」こそが仕事になる。どうせやるなら、そこまで行きたいものである。