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「与論は私刑、私刑は娯楽」

      2018/10/04

2月にはピョンチャン五輪でカーリング女子が大活躍するなどスポーツの話題で始まった2018年。
その後は、スポーツ界のスキャンダルが相次いだ年でもあり、スポーツの一年だったように思う。

まず、五輪直後のパワハラ告発に揺れたレスリング界、その後、アメリカンフットボール、ボクシング、体操、ウエイトリフティング、大相撲と不祥事が相次いだ。
美しいものの代名詞であるスポーツマンシップが、こんなにも病んでいたのかと驚く。

それにしても相変わらずマスコミの報道は私刑化している。
特にアメフトとボクシングの二人はともに強面だったせいか、徹底して糾弾された。
「与論は常に私刑である。私刑は常に娯楽である」と芥川龍之介が言っているが、まさしく公開私刑(いじめ)だった。

人は私刑を娯楽とする。
以前ローマに行ったとき、円形競技場「コロッセオ」を訪れた。
い建物だから崩壊が進んでいるのかと思っていたら、現地のガイドさんが意外なことを言った。
「コロッセオは一時期、石の供給場として使われていました」
どうやら後生の人がコロッセオを壊していたらしい。
しかも教会や貴族がこぞってコロッセオの石を切り崩し、自分の建物用に使っていたというのだ。

そのコロッセオは私刑の場として使われていた。
五万人以上を収容するコロッセオは一階と二階が大理石の座席、三階は女性席で木製だった。
古代ローマが男性社会であったことがこの造りからも分かる。
四階は立ち見席で、貧しい人たち用の天井桟敷もつくられていた。
屋根はなく日除け用のテントが天井がわりになっていたという。

コロッセオは完成後、100日だけ使われた。
毎日の見世物の費用は、ローマ皇帝や富豪、政治家の私財で賄われた。
ローマ市民は、コロッセオでの見世物を無料で楽しむことができた
入口で自分の階級を示す札を見せれば、階級ごとの席が満席になるまで入場できる仕組みだ。
コロッセオの100日間の見世物は後の人たちが批判するものになったが、当時のローマ人は熱狂した。

午前中は猛獣狩りか猛獣同士の戦い。
ランチタイムは犯罪人の公開処刑。
午後は剣闘士(グラディエーター)の試合と定められていた
ライオン、トラ、象、水牛、豚、ウサギなど、野生の生き物から民家で飼われていた家畜まで、ありとあらゆる動物が総動員された。
記録によれば100日間で9,000頭の動物、3,000人の剣闘士が亡くなっている。

公開処刑は、十字架に磔にした上で猛獣の餌食にする場合と、単にアリーナに放置して猛獣に与える場合とがあった。
それらの見世物を娯楽として当時のローマ人は熱狂した。
他の娯楽が少なかったとはいえ、朝から晩までそれを食事しながら見物する人がたくさんいたというから驚きだ。

こうした行為に対して哲学者のキケロは「残酷で非人道的だが、苦痛や死に視覚的に慣れさせる訓練として、これ以上効果的なものはない」と評した。
反対にセネカなどは「この様な闘技会を観戦することは、人をいっそう非人間的にさせる」と述べている。

今にしてみればまったくひどい見世物なのだが、当時のローマ人だけがこうした残忍性を持っていたわけではない。
それに近い記録は世界中、どこにでもある。
ヨーロッパ、アメリカ、アフリカ、中東、アジア、そして日本にも公開処刑の記録は残っている。
悪いことをするとこんなひどい目にあうぞ、というのが処刑する側のメッセージなら、庶民はそれを娯楽気分で参観した。

「世論は私刑、私刑は娯楽」という芥川の指摘は人間の本質を看破している。
どこかにその自覚をしまっておく必要が私たちにはある

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