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モッタイナイ精神とIT化

「ジュウドウ」「イッポン」「ワザアリ」「カラオケ」「マンガ」「カイゼン」「カロウシ」などの日本語は世界でそのまま使える言葉になった。
最近それに「モッタイナイ」が加わりつつあるようだ。

日本人の美徳の一つは「モッタイナイ精神」。
紙袋や包装紙、コンビニ袋など、いつか何かに役立ちそうなものを取っておき、イザというときにそれが役立つ。
使えるものはトコトン使い切る知恵が発達した私たち。
今年80歳になるZ会長もモッタイナイ精神の権化のような人だ。

紙製品を製造販売するJ社のIT化は20年前から時間が止まっていた。

A社長(50)は、父親であるZ会長(80)に頭が上がらず、意見が通らない。
そのせいで、社員が仕事で使うパソコンやスマホは個人の所有物を会社に持参してつかわせている。
もちろん費用の支給は一円もない。
社員のパソコンが古くなり、動作が極端に遅くなっても、「動いているのであればそれを使わせなさい。買い換えなんて完全に壊れてから」といわれる。
「モッタイナイ精神は大切だが、生産性の妨げになっている」とA社長が訴えてもZ会長には届かない。

「武沢先生、どう思われますか?」と尋ねられた。

「私は何とも思いませんが、A社長はどうしたいのですか?」と私
「私としては会社全体の生産性を高めるためにITを含む投資が不可欠だと思います。しかしZ会長がITを軽視し、会社のIT化を阻んでいると思うのです」
「では、こうされてはいかがでしょう」
と次のように申し上げた。

モッタイナイ精神は今までもこれからも大切です。
会長が現場第一線を指揮した昭和の時代は日本人の人件費は安く、機械やソフトが高価でした。
しかし人口減少社会の今、人のコストは上がり、新規雇用は昔の10倍以上難しくなり、機械やソフトの価格は10分の1以下まで安くなりました。
昔はコンピュータ1台を買うのに何十人分かの給料が必要でしたが、今は反対に、社員一人の給料で何台かのパソコンが買えます。

つまり、パソコンの性能が悪いことで人が待たされる時間、イライラさせられる時間が毎日合計して30分あるとすれば、そのコストは膨大なものになります。
仮に一人の時給を2000円とするなら、30分は1000円の人件費です。
それは1年(250日)で250,000円に相当します。
さらに、新しいパソコンで仕事が10%早く終わるようになれば、2,000円×0.1×8時間×250日で年間40万円になります。
それを合算すれば65万円です。
65万円の成果を生むモノが15万円で買えるわけですから、一台買い換えるごとに50万円利益が増えることになります。

以上のように、「お金のモッタイナイ」から「時間のモッタイナイ」に判断基準をシフトすることでIT化の促進がしやすくなるのではないでしょうか。
そんなお話しをした。

これは1~2年前のある地方都市での話なので、その後J社のIT化がどうなったのかは分からない。

だが我が意を強くする出来事があった。
それについては明日につづく。