未分類

読むのも考えるのもひとつのレッスン

丸谷才一氏(まるや さいいち、1925- 2012)氏の考え方や文章が好きで、何冊も氏の小説や随筆を読んできた。
対談型で気軽に読める『思考のレッスン』も何度か通読している。

レッスン4「本を読むコツ」に、本はバラバラに破って読めとある。
事実、丸谷氏の本棚にはバラバラになった本がいくつも積まれていたそうで、インタビュアーが驚いていた。蔵書するとか、美本を愛蔵するような価値観はないらしい。大事なのは本のテクストであって、本という物体ではないという考え方が合理的である。

実際問題として、あなたのオフィスから紙の本や雑誌、資料類を必要なものだけに絞ることができたら、相当スッキリするはずだ。私も初めて「本はバラバラに」のくだりを読んで、『思考のレッスン』を破りながら読んでみた。千円札を破るような罪悪感をおぼえたが、今では慣れてきて年に何冊かは破って読む。

レッスン5「考え方のコツ」にも共鳴するところがあった。
私は自分の悩みや疑問に感じていることを人に話すことはしない。どうやら丸谷氏もそうらしい。私の場合はただ単に人に相談するのが恥ずかしいというだけの理由だが、丸谷氏の場合はもっと筋が通っている。

それは、自分で考えて答えを見つけようとする能力が育たないからだという。
中途半端な状態で他人に話したって、だいたい相手にされない。「なんだそんなことか」と内心で思われるのがオチ。自分が抱えている疑問や悩みというのは、あまり程度の高いものではないのだなと自信をなくしてしまう。せっかくの疑問や悩みが育たなくなるからよろしくない、というのが氏のロジックだ。
なるほど、悩みや疑問というのは育てるべきものらしい。そうすれば考える才能が発達する。

すぐに他人に聞くな、というわけだ。

「ただし・・・」と丸谷氏。

「一番大事なのは、謎を自分の心に銘記して、常になぜだろう、どうしてだろうと思い続けることが肝要」とのこと。

答えが出ていない疑問・悩みというものをうやむやにせず、心に銘記せよという助言は具体的ですぐに使えるアイデアだ。

もう少し続きがあるので、明日の金曜日号でご紹介したい。