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無理をさせるが、無理はさせない

まだ40代の芸人さんが心不全で亡くなった。直前までテレビ収録をしていたそうで、体調はあまり良さそうではなかったという。だけど、本人はがんばって収録にのぞんだ。もし自重していれば・・・、と惜しまれる。

ときどき母親からメールがくるが、文末には必ず「無理しないでね」と添えられている。「母さんこそ無理しちゃダメだよ」と返信する。「無理をしない」というのは、心と身体を大切にする上で重要なことである。

「無理しないでね」「リラックスしてね」「楽しんできてね」と母親のように優しい言葉を投げかけるときと、「がんばれよ」「ベストを尽くせよ」「死にものぐるいでやれよ」と父親のように励ますときがあるが、それは TPO による。

仕事とは本来が「無理をすること」であり「がんばること」である。松下電器(現・パナソニック)の元社長、谷井昭雄氏も会社のなかでは、「無理をしなければいかん。無理をした分だけ他社をリードできる」と述べていたそうだ。おそらくそれが創業者・松下幸之助氏のスピリッツでもあったろう。

太閤秀吉は、「主人は無理をいうなるものと知れ」と武将たちに語っていたという。経営者や上司が部下に無理を言わなくなってしまったら役職放棄と言われても弁解できないのである。

部下の身体や心はいたわってあげて、いつも優しい言葉を投げかけよう。だけど、仕事そのものの質や量については一切妥協せず、無理難題を平然と要求する上司であろう。仮に部下が露骨に面倒くさそうな顔をしたとしても、平然と命ずるのが上司である。妙に遠慮したり、気づかい過ぎたりすると、その部下は増長するばかりである。そういう部下が何人かいたら、上司は針のむしろとなる。

平然と無理難題を言う。ただし、任された部下が意気に感じてくれて、「よしやってやろう」と思う仕事の頼み方をすべきだろう。

大抵の場合、部下が面倒に感じる仕事とは、

・やり方が分からない仕事(過去にあまり経験したことがない仕事)
・それをやる意味や意義がよく分からない仕事
・なぜ私がそれをやるのか分からない仕事

などである。

やり方が分からない仕事であれば、やり方を一緒に考える時間を作ろう。一方的にやり方を指示するのも結構だが、方法論を考えてもらうことで、部下はその仕事がやらされ仕事ではなく、自分からやる仕事に変わっていく。

無理難題を言いつつも、「面倒くさい」「嫌だな」と思わせる分量を軽くするのだ。

「おたくの社員さんは本当に優秀ですね」と言われる会社には、無理が言える社長に鍛えられた無理が言える上司が何人もいるものだ。

それが「無理をさせるが、無理はさせない」という人事の妙である。