未分類

第一印象で人を採用する功罪

近所に最近できた讃岐うどん店は美人揃いである。うどんもうまいが、スタッフもいい。きつねうどん定食が810円するから安い店ではないのに、連日満席なのはスタッフのせいではないかとにらんでいる。

スタッフ次第で売上は変わる。それは当たり前のこと。

球場のビールの売り子は、売れる子と売れない子の差が5倍以上に開くそうだ。採用する側も売れそうな子を選ぶわけだが、最終的には容姿で選ぶと聞いたことがある。その真偽のほどは定かでないが、本人の表情や態度を重視するのはどの会社も同じこと。

ビールの売り子とちがって新幹線のワゴン販売なら「どの子から買おうか」という選択肢がない。だから売り子は誰がやっても同じかというとそうではない。『新幹線ガール』みたく、平均の何倍も売る人が出てくるのだ。

新幹線ガール http://www.amazon.co.jp/dp/4840117829/

外見は、内面の表れであることが多い。仕事が好き、人が好き、商品に惚れている、といったことが、本人の表情や言葉づかい、仕草などにあらわれる。だから外見で採用してもあまり大きな間違いはしない、はずである。

「大臣は顔で選ぶ」と宣言した政治家もいる。リンカーンが大統領になったとき、閣僚を顔で選んだ。ある閣僚がある人物を推薦したところ、「あの男は顔が気に入らない」と却下したリンカーン。「顔は本人の責任ではありません。顔で選ぶのはフェアなやり方とは思えません」とその閣僚が言った。それに対するリンカーンの言葉が非常に有名になった。

「人間、40にもなれば自分の顔に責任がある」

こうした話をすると、早合点する人がいる。

「そうか、美男美女を集めればいいのだな。それなら自信がある」とばかりイケメンぞろいの会社をつくった社長を知っているが、それが功を奏しているとは言いがたい。「第一印象で決めればいいのですね」と直感頼みの採用をしている会社もあるが、それもうまくいかない。

そもそも人は外見で判断してはならないと説いている人がいる。それは孔子だ。なぜなら、孔子自身がある男を外見で判断して痛い目にあっているからだ。

孔子の弟子に、子羽という人物がいた。孔子は彼を弟子にすることをためらったほどの醜男(ぶおとこ)だった。こういう顔の男は大した見込みがないだろうと、すぐに存在を忘れてしまった。ところがその後、学問や研鑽が進むにつれて子羽は頭角を表し、300人の弟子をもつ名士に成長した。彼の名声は国内外でも知れわたるほどになった。

孔子は深いため息をつきながらこう述懐した。「吾、貌を以って人を取りて、これを子羽に失えり」

「私は顔つきから人物判断して、人を見そこなうという失敗をおかし、子羽を見誤った」

どっちなのよ、顔で判断してよいのか悪いのか?ということである。

私の考えはこうだ。
顔やスタイルなどの外見的好みで人を採用すると失敗する。ただし、本人の顔つきや仕草など、内面がにじみ出てくる情報を参考にするのは非常に効果的なことである。

「笑顔が美しい」「明るい」「自信に満ちている」「溌剌としている」「若々しい」という人は誰だって採りやすい。

だが、孔子が見誤った子羽のように「ひどい顔」「笑顔がない」「明るくない」「若々しくもない」という人を外見だけで「NG」と即決していないだろうか。

ひょっとして、その相手が将来の閣僚候補かもしれない。だからこそ第一印象や直感だけで人を判断するのは危険なのである。正社員はもちろん、パートアルバイトといえども、ある程度時間をかけて多面的に人物判断をしていきたいものである。