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イノベーションとは その1「商業の歴史」

Rewrite:2014年3月21日(金)

商業の歴史をみていると、事業が起こり、成長発展し、成熟し、衰退していく変遷がよくわかる。たとえば、私が子供のころ(昭和30年代半ば)には、母親たちの買い物は今と全然ちがっていた。

買い物かごを手にもって、子供の手を引き、雨の日には傘をさして近くの八百屋、魚屋、肉屋、乾物屋、金物屋などを転々と歩いた。冷蔵庫が十分に普及しておらず、買いだめはきかない。とうぜん家事は専業主婦でないとつとまらないほど多忙を極めたはずである。

この当時、八百屋や乾物屋などを営む人たちにとって、誠実な商いを毎日つづけることこそ「企業努力」であった。
自動車がないので、商圏は狭い。顧客の大半は地元のリピーター。完全な地域密着商売だ。ご近所とのつきあいを大切にし、常連客の家族構成を記憶しておくことや、気持ちのよい接客をすることなどで信用を築いていった。いずれにせよ、きわめて緩やかな競争環境でもあった。

それからわずか10年、昭和40年代に入ると電化製品や自動車の急速な普及により、主婦たちの家事労働は大幅に軽減され、おりからの経済発展も手伝って買い物の目的や方法が劇的に変わりはじめる。郊外に駐車場付きのスーパーが誕生し、食品も衣
料品も玩具も文具もすべてが一カ所でまかなうことができる。主婦にとって、たいへん便利な時代が到来した。

このような時代の変化を見抜き、地方の小さな小売店にすぎなかったダイエー、イトーヨーカドー、ジャスコ、ユニー、ニチイなどが全国展開し、続々と株式公開を果たす。ちょうど、今のIT関連企業の公開ラッシュと似ていた。

さて、この話の本質は何か?

イノベーション(革新)の重要性である。自らすすんで過去の成功体験を捨てた所が勝ち組になったのである。ダイエー(薬局)もジャスコ(呉服屋)もヨーカドー(衣料品)もユニー(薬剤店・ふとん屋)も、地方小売店としては、ある程度の成功をおさめていた。にもかかわらず、過去と訣別する決意をし、店舗の総合化や大型化を一気にすすめる。同時に経営の近代化にも着手。商いの精神にサイエンスを導入した。より大きなビジョンに向かって合併する企業も相次いだ。

国内の商店街の大半は、こうしたイノベーション組によって大打撃を受けた。
そもそもこうした時代の変化が、我が商店にどのような影響をあたえるのかに気づいていなかった所も多い。そうした不勉強なところは例外扱いとしても、イノベーションに成功した組とイノベーションできなかった組とを分けた根本的な理由は何なのか?つまりイノベーションの原動力となった価値観の変化を見逃してはならない。その価値観の変化とは・・・。

<明日につづく>