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絵本をつくる会社

2004年にお菓子メーカーの東ハトが発行した『お菓子を仕事にできる幸福』(日経BP社)という絵本がある。

「キャラメルコーン」や「暴君ハバネロ」など、本業のお菓子が順調だったのに、旧経営陣の乱脈経営がたたって2003年に破綻した東ハト。

「私たちの仕事って、いったい何だったの?」と意気消沈する社員の気持ちを癒し、ふたたび鼓舞するために作られたこの絵本が当時、話題をよんだ。

経営再建策の一貫として、CBO(最高ブランド責任者)にサッカーの、中田英寿選手を招くなどの話題も手伝って、絵本の評判も同社の再建も好調だったようだ。

株式会社東ハト http://tohato.jp/

『お菓子を仕事にできる幸福』

「世界でいちばん短い、そして世界でいちばん平易な経営思想書」として、この絵本が東ハト再建に効果があった様子を見て、ある老舗大企業がそれを応用した。光ファイバー・電線大手のフジクラだ。

創業120周年、人間でいえば二度目の還暦を迎えることになった株式会社フジクラは、2005年を「第3の創業」年と位置づけ、同年10月に新たな経営理念を次のように成文化した。

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<経営理念>

フジクラは、1885年の創業以来、先進の技術と高い信頼で社会の発展に貢献してきました。フジクラの強みは、特定の優良顧客との間に培った強固なパートナーシップと、それがもたらす安定した経営にありました。しかし、今後フジクラが生きていく市場はグローバルな競争の厳しいマーケットしかありません。しかし、この変化の激しいマーケットで勝ち抜くには、企業風土の抜本的な改革が必要です。

このため、新たな「道」を成功裡に切り拓くことが「第3の創業」であり、この「変革」をナビゲートするものとして、フジクラグループ全社員が共有すべき新しい経営理念の「ミッション・ビジョン・基本的価値」を策定しました。

<ミッション>

フジクラは
”つなぐ”テクノロジーを通じ顧客の価値創造と社会に貢献する

私たちは
”つなぐ”テクノロジーの分野であくなき挑戦を続け価値ある商品及びソリューションの提供により顧客の信頼に応え社会に貢献します

<ビジョン>

“つなぐ”テクノロジーの分野で、顧客に最も信頼されるパートナーになる

先進的で有用性の高い商品とソリューションを継続的に開発し、 “つなぐ”テクノロジーの分野でリーダーになる 「一人ひとりが主役」として行動し、世界で通用する有能な人財集団になる

<基本的価値>

カスタマーサティスファクション(Customer Satisfaction)
“それでお客様は満足ですか?”

変革(Change)
“進歩への意欲を持って取り組んでいますか?”

共創(Collaboration)
“それぞれが十分に能力を発揮するために協力し合っていますか?”
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こうした内容で成文化した同社だが、やがて、「抽象的で堅苦しい言葉が並ぶ理念は、単に文章にしただけでは心に響きづらい」と感じるようになっていた。

そこで思い出したのが東ハトの絵本。

理念やビジョンの内容をふまえて、「飛ぶぞう。」というタイトルの絵本を作った。

日経ビジネスオンラインニュース(無料登録制)には、次のような記載がある。

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ある見開きには、オタマジャクシと鯨の絵があり、「オタマジャクシがクジラになってはいけないのでしょうか。」、「先輩たちは、高い目標をかかげ、果敢に取り組み、新しい事業を立ち上げ、経営の礎を築きました。そこには確かに仕事をする喜びや達成感あふれる新鮮な感動がありました。」といった言葉が躍る。
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http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20070511/124640/

社員教育に「絵本」と聞くと、軟弱なイメージを持たれるかも知れない。社員の活字離れを助長するのではないかと憤慨される経営者がいるかも知れない。

しかし、東ハトもフジクラも絵本だけを決め手にしようとしている訳ではない。
伝導のツールとしてわかりやすく、それでいて心に響くものであれば、絵本だろうが映画だろうが構わないのではないだろうか。

また、絵本に限定する必要もない。
音楽、動画、グッズなど、自由に作ってみてはいかが?

たとえば、

書店で売れるような絵本、展開がワクワクする小説、ロックやPOPな社歌、普段も着たくなる社員ユニフォーム、見ているだけでテンションが上がるプロモーションビデオ、自慢したくなる会社の未来CGやパース、模型・・・。

若い社員がそうしたものを作る過程で、自社の過去・現在・未来を効果的かつ、積極的に学習しているはずだ。