「打倒○○○社」というスローガンを掲げて会社がうまくいくケースは少ない。なぜなら、打倒するのではなく、アンチするかロール・オーバーしなければならないからだ。
ビートルズだって、打倒ベートーベンの音楽ではなく、そのものずり、『ロール・オーバー・ベートーベン』というスタンスで成功した。
いつの時代でも若者は強くて大きいものを標的に、それにアンチテーゼを掲げるからこそ頼もしい。
昭和30年代後半以降のスーパー勃興期もそうだった。
ダイエーやヨーカドー、ジャスコが大きくなっていくプロセスでも、『ロール・オーバー・三越』が合い言葉だったという。
当時まだ30才代だった中内(ダイエー)、伊藤(ヨーカドー)、岡田(ジャスコ、今のイオン)、西川(ユニー)などの経営者が、自分たちの年商の何百倍もの企業を標的にし、『彼らが見えていないものを自分たちは見ている』と豪語し、その後、実際にロール・オーバーした。
ソフトバンクも楽天も最近のIT企業経営者からみればベートーベン的存在なのかもしれない。
先週のテレビ番組に「mixi」と「はてな」の社長が出ていたが、インターネットによって巨大なビジネスを構築しようとした初期の経営者たちに対して、最近は狭いながらもかゆい所に手が届くサービスを提供して、あっという間に何十万、何百万という会員を集めて成功しているのだ。
業績好調とはいえ、楽天もソフトバンクも自らをロール・オーバーできなければ、誰かにやられる。それがビジネスだ。
ヨーカドーの会社経営の巧みさは、ヨーカドーをロール・オーバーする会社がグループ内(セブンイレブン)にあった点だろう。
どうせいつか、誰かにロール・オーバーされるのならば、自分がその張本人でありたい。
「ロール・オーバー・自分」だ。