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三人のコンサルタント

先週のある日。

たくさんのゲストが「がんばれ社長!」東京オフィスを訪ねてくれた。
ノーアポ歓迎日なので、来客が重なる。来客者のほうもそれを覚悟のことで、どこの誰と会うのか分からないスリリングさがある。

ある販売会社の社長のAさんがオフィスに入ってこられるなり、
「今日は武沢さんに相談があるのですが、今、よろしいですか?」と聞く。
私は同席されている他の来客者にも目線で確認しながら、「はい、この状況でもよろしければどうぞ」

Aさんは、切り出した。

偶然なのだが、同席したのはマーケティング関係のコンサルタントばかり3人だ。皆、だまって彼の長い話を最後まで口を挟まず聞く。
彼の、相談というより状況説明は15分ほど続いただろうか。
(コンサルタントは我慢強く、表情も変えずに、相手に最後まで気持ちよく語ってもらう仕事だ。とは言え、相談内容がどこにあるのか分かりづらい話を15分聞くのは相当な辛抱が必要だった。)

「・・・・・・・という訳ですので、ご意見をお聞きしたいのですが」とAさん。

要するに、ある輸入製品を売りたいのだが日本ではまだ市場がない。
しかも自社は代理店の下の販売店の立場だ。できれば正規代理店になってメーカーと直取り引きもしたい。だが、今の代理店とケンカはしたくない。どのような優先順位で行動すべきだろうか?

ということだった。
この話を聞いていた3人が順に意見を述べていった。

この3人の意見が面白かった。全員が違うのだ。

・一人目の意見。
絶対成功する、という信念は大切だが、特定商品への思い入れが強すぎてはかえって盲目になる。”市場に聞け”ということばがあるように、まずは営業活動に出向くことだ。そして、企業としてその製品で売上げや利益を確保できるという見通しが持てるようになることが最優先の課題ではないだろうか。結果次第では、その製品ではダメだと結論づける事だってあり得る。決めるのはお客だ。

・二人目の意見。
気の毒だが日本での成功は大変むずかしい製品だと思う。今のあなたの話を聞いて、私自身が消費者になりたいとは思えなかった。お客のゴリヤクが何なのかを分かりやすく語れるようになることが、あなたの一番の優先順位ではないだろうか。また、今まで日本でこの製品がなぜ売れてこなかったのかをもっと調べることも大切だ。もっと冷静になって、あなたにふさわしい他の製品をさがした方がよいと思う。

・三人目の意見。
ユニークという意味でとても面白い製品を見つけてきたと思う。簡単に売れるとは思わないが、ある程度の市場が日本にもあるように思う。
僕だったら、すぐにそのメーカーにアポをとって外国に飛ぶ。そして、こちら側の熱意とか希望を伝えに行く。メーカーの熱意も聞いてみたい。そして、安心して日本国内での販売活動が続けられるような供給体制やアフターサービスなどを確認し、販売計画をメーカーと共有してくる。

三人目は売れると言い、二人目は売れないと言い、一人目は市場(お客)に聞けと言っている。結局、どれも真理なのだ。

だがこの時のAさんの態度は、相談者として好ましいものではなかった。
議論してしまうのだ。
Aさんはこの製品を売りたくてたまらないのだろう。だから三人目の意見には耳を傾けるが、一人目と二人目には反論してしまうのだ。自分にとって好ましい意見には耳を傾け、好ましくないものには反論する、というようではバランスのとれた意志決定ができにくくなる。

だがコンサルタントの三人はさすがプロである。誰一人感情的にならず、最後には彼が吹っ切れて明日からがんばれるように焦点をしぼらせるのだ。

「Aさんが3年後に販売したい数字は月間で幾らですが?また、今までは月平均で幾らですか?そのギャップを埋めるために、どのような行動が必要ですか。それを箇条書きに紙に書いてみませんか。」

などと問題を足元から再確認していった。

もちろん、Aさんも立派な社会人だ。最後には3人のコンサルタントに深々と頭を下げて戻って行かれた。

がんばれAさん!