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捨てる

今日は、シンプルかつ身軽で居つづけることの大切さを再確認しようと思う。

悟りを求めて出家し、修行僧(雲水)になる。師を求めて寺を渡り歩き、「これぞ!」という師に巡りあうことができれば、そこで修行を続ける。
幸運にも師の元で悟りをひらくことができれば、印可状(いんかじょう)という合格証をもらう。あいにく悟りが得られないまま師に見限られるられてしまえば、別の師をもとめて旅に出ねばならない。
こちら側で師を見限るときだってある。そんな時もやっぱり旅にでる。

だが、【今日の言葉】で紹介した慧薫禅師の言葉にあるように、一度入った寺を出るのがなかなか大変らしい。悟りもひらけず、師を見限ることも見限られることもないまま、人間関係と義理人情がからんで、思い切り悪くひとつの寺に居つづけてしまいがちだという。

私はこの話を聞いて、ビジネスも一緒だと思った。
慧薫禅師の言葉をビジネスに応用すれば、こうなる。

「起業するのは難しくない。難しいのは、起業したあとでも会社を起業的に保つことだ」

「会社を軌道に乗せるのは難しくない。難しいのは、軌道に乗せた仕事をさらに発展させることだ」

悟りを得るためには、今持っているものを捨てなければならない。
一度得た悟りでも、更にそれを深めるためには捨てなければならない。
儲かっている仕事でも、捨てるべき仕事がある。楽しいことでも、捨てねばならないものがある。

余分なものがあってはならないのだ。

自宅のテレビや音楽をシャットアウトすれば沈黙がやってくる。沈黙があれば、親子や夫婦の会話が始まる。

深い満足と納得が得られる仕事をするためには、「そこそこ納得」というレベルの仕事を止めなければならない。

個人的な例で恐縮だが、私は経営コンサルタントとして顧問先にサービスを提供するのが仕事だった。売上げや利益を伸ばすためには、顧問先を増やすことが仕事だ。
そんな私が、顧問先を持たないと決めてインターネットに賭けた。
インターネットに賭ける決心をしてからは、当時の仕事の大半を止めた。
それからというもの、仕事の内容が変わり、おつき合いする会社や人が変わり、私自身のライフスタイルも大きく変わった。

ネット以前とネット以後、私が働く時間はそれほど変わっていない。
だが、満足感や充実感は比べようがないほど高まった。

そしてまた、何を捨てるか決めねばなければならないと思っている。

悟るためには修行の旅を欠かせない。だから、いつもシンプルで身軽で居つづけたいと思う。