初投稿2002年1月10日、Rewrite:2014年4月4日(金)
私のお気に入りの一冊『ビジョナリーカンパニー2.飛躍の法則』(日経BP社刊)の中に『ストックデールの逆説』と題した衝撃的なエピソードが出てくる。
ストックデールとは人の名前で、ベトナム戦争時に最高位の軍人であった人物だ。8年間の捕虜生活で20回以上の拷問を受け、生きて家族と再会できるかどうか分からない状況の中を生き抜いた。彼は捕虜仲間のリーダー役を引き受け、会話が禁止された収容所内で捕虜同士の連絡網を作り上げ、一人でも多くの捕虜が生き延びて帰国できるように最善を尽くした。そのストックデール氏がこの書の中で語っていることは、まさしく衝撃的なのである。
1.「私は結末について確信を失うことはなかった。ここから出られるだけでなく、最後には必ず勝利を収めて、この経験を人生の決定的な出来事にし、あれほど貴重な体験はなかったと言えるようにするという確信である」
まさしく楽天的で、積極思考、プラス発想だ。そして同時に次のような一見矛盾したことも語っている。
2.「捕虜生活で耐えられなかった人の多くは楽観主義者だった。クリスマスまでには出られると考えた人たちだ。クリスマスが近づき、終わる。そうすると、復活祭までには出られるだろうと考える。そして復活祭が近づき、終わる。つぎは感謝祭、そして次はまたクリスマス。失望が重なって死んでいく」
1と2は矛盾しているように感じる。だが、そうではないと氏は語る。
「これはきわめて重要な教訓だ。最後には必ず勝つという確信を失ってはいけない。だが、それがどんなものであれ、自分がおかれている現実のなかでもっとも厳しい事実を直視する規律を失ってはならない」と氏は説いている。
まさしくこれだと思う。最後には必ず我々(私)が勝つ。
だがそのためには、このひどい現実を直視し、そこから逃げることなく立ち向かう勇気も大切だ。
夢や希望というベールで意図的に不都合なものを覆いかくすのでなく、現実の厳しさについてもありのままに受け入れ、そこを懸命にしのいで生き延びる努力をすることが、夢と希望につづく最善の備えなのであろう。