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コンサルタントの秘密 2

40才で経営コンサルタントを始めてから12年経過した。月日のたつのが早いのか遅いのかよくわからぬが、ともかく干支がちょうど一回りした訳だ。

私の場合、なにかの国家資格も民間資格もなかった。誇れるような学歴や経歴もなく、誰が顧客になってくれるのかのあてもなく、「この仕事でご飯が食べられれば最高だ」と思ってスタートした。

その当時、ちょっとした失敗があって、お金がまったくなかった。
友人の好意で、衣料倉庫を改装してもらいオフィスとして賃料1.5万円で貸していただき開業した。
コピー機やFAXなどの事務用品は無償貸与という最高にありがたい条件だ。彼の気持ちがありがたかった。
とにもかくにも、月額5万円の顧問料を払ってくれる美濃市(岐阜県)のガソリンスタンドだけを顧客にもち、最初の月がスタートした。
家賃と交通費で売上げのすべてが消えていく。顧客開拓を急がないと、また失敗する。

だが、どこかで経営コンサルタントとしてのイロハを学んだわけではないので、やり方にとまどった。
すべて自己流で見込客をさがし、顧客を作り、顧客と接し、同時に市場と自分とをさぐりながら仕事のやり方を変えてきた。
そして、今なお色々と変えつつやってきている。

そんな経験の中から、知らず知らずに編み出した武沢流とでも言えそうな経営コンサルティング手法が若干ある。それが、どれだけ世間に通用するものかわからない。ただ、昨日ご紹介した名著、『コンサルタントの秘密 技術アドバイスの人間学』(G・M・ワインバーグ著 共立出版)をひもときながら、それとの対比であれば多少は語れると思う。


『コンサルタントの秘密』の作者は、このようなことを書いている。

・・・
コンサルタントのあなたは、依頼主が「自分は問題を抱えている」ということを言わずに済ませてあげるようにしよう。
それには、問題に対して「技術的問題」というレッテルを貼ることである。それは本当は依頼主の責任ではなく、専門分野に必要な人材を全部揃えておくなどということはまずできないので、外部の専門家を雇う必要性を認めてあげることなのだ。
予算レビューの時でも、経営上のコンサルティング料などの科目ではなく、技術上のコンサルティング料として計上することによって体面を保つチャンスを与えてあげることなのだ。
誰だって外部からの助力を必要とすることがある。だったら、抵抗なくそれをさせてあげるよう配慮しよう。
・・・

もしあなたが何かの専門分野をもつ方なら、ワインバーグのいう通りにすればうまくいくだろう。事実、彼もハイテク分野の技術コンサルタントという肩書きをもっているのだ。
だが、私のように何も専門分野がない場合はどうするか。

それは、依頼主(私の場合は、100%社長だった)の右腕、左腕、時には便利屋になればよいのだ。

「武沢さん、我が社は経営全体に問題がある。社長の私も経営者として未熟だ。だから経営コンサルタントを必要としているので、あなたにお願いしたい」
などと言われたことは一度もない。これからもたぶん、ないだろう。

依頼主のニーズは顕在化しているものも潜在化しているものもある。
例えば、
1.うちは営業部隊が弱い。だから営業強化のための研修かマニュアル作りが必要だ
2.新入社員教育が不十分だ。だからみんな先輩社員のよくない所だけをマネていく
3.うちもきちんとした賃金評価制度を作らないと、優秀な社員から不満が出かねない
  
このように、経営者が「自社の課題や問題」として書き出すことの大半は、技術的なテーマに置きかえることが可能だ。
だったらあなたも、技術的な問題を解決するというアプローチをすれば良い。

例として、

「社長、まず3ヶ月を目安に営業強化策を練りませんか。他社事例や外国の最新事例なども検討しながら、今の御社にもっとも合ったやり方を考案しましょう。
ちなみに、先月お手伝いさせていただいた繊維問屋のA社では・・・」と身近な成功事例を交えて提案する。

こうすることによって、これを提案したあなたは、営業強化というテーマに関する技術コンサルタントなのだ。決して経営を改善する経営コンサルタントなどではない。

<続く>

『コンサルタントの秘密 技術アドバイスの人間学』(共立出版)
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