昨年、夏の全国高校野球東東京大会は、開成高校の快進撃に沸いた。
毎年、卒業生の約半数が東京大学に進学する超名門校が、ベスト16まで進出したのだ。奇跡だ!
だが偶然の産物ではなく、その影に、正しいビジョンと正しい練習法があったのだ。
以下、「日経Associe」2005年10月4日号を参考に同校野球部の練習法について見てみたい。
野球部監督の青木秀憲氏によれば、組織は大きく分けて三つの種類があると考えた。
一つは「無法地帯」、つまり弱小チームのレベルがこれで、全体の統制が取れず、バラバラの状態。全国の野球チームをみると、これに該当するチームが最も多い。
二つめは「強制統制」。高校野球の強豪チームはここが多く、カリスマ監督のもと、それに従って動く選手がたくさんいる状態。
三つめは「自律」という組織。選手が自分をコントロールして動く状態のチームで、開成高校がめざしたのはここだという。
そのためには、管理は一切しない。その生徒に必要だと思える練習メニューを紹介し、その中から選ばせる程度だというのだ。
自主性を育てるために、管理しない。
下手をすると「無法地帯」になりかねない挑戦だが、目標が共有されており、相互に信頼があれば賢明な選手たちは自分をコントロールし始めるという。
また、練習に避ける時間は週に3時間だけと決めた。それでもハンデにならない効率的な練習法によって「それだけでの練習時間でも充分に甲子園に行けるし、全国制覇だって夢ではない」(青木監督)と考えたのだ。
そのためには、練習の優先順位を間違えてはならない。多くのチームは守備練習に多くの時間を割く。だが青木監督によれば、それは間違っているというのだ。
一試合の中で打球が一人の選手に飛んでくるのはそんなに多くない。
しかも飛んでくるものの中には、誰にでも取れる簡単なものもあれば、名手でも取れないクリーンヒットもある。ということは、一生懸命に守備練習してもチームが勝てるようになる確率は低い。
だが、バッターボックスに立つ回数は先発フル出場すれば一試合に確実に3~4回は回ってくる。全員がとにかく遠くまで飛ばす打撃力をつけ、打線をつなげれば強豪相手に打ち勝つことだって可能だと考えた。それに、高校野球はプロと違って一点を争う試合はそんなに多くない。
結局、昨夏の大会で開成高校野球部のチーム打率は4割を超えた。
またヒットの3本に1本は長打という破壊力も見せつけ、勝ち進んだのだ。
こんなチームが全国制覇する時代がもうすぐそこに迫っているかもしれない。
常識をくつがえす練習方と管理法。あなたの会社経営、ビジネスにも応用できる何かがあるはずだ。考えてみよう。