お兄ちゃんが去年まで着ていた服を「おさがり」として弟も着る。
むかし、そんなことは当たり前だった。来年は着られなくなるのが分かっている子供服に、そんなにお金をかけてどうするの?というのが人口増加社会での常識だ。その結果、三人兄弟あわせて子供服に投じるお金を仮に3万円としておこう。
少子化による人口減少社会では大きな意識変化が生まれる。意識変化は価値観の変化、消費の変化となって表れる。
まず、子供が一人しかいない。しかも長寿時代のおかげで両親の両親も元気でスポンサーになってくれる。合計6人から10人もが一人の子供に「愛」を注ぐ。
その結果、子供服を買う場所はセレクトショップやブティックへ。そして、アルマーニやバーバリー、セリーヌといった高級ブランドの子供服が選ばれる。事実、既にそれらブランドの子供服がある。
この場合、子供服に投じられるお金は6万円だ。このように、人口減少社会でもかえって市場がふくらんでいく。
事実過去20年間、子供の出生数が年々減り続けるなか、鯉の滝のぼりのようにベビーフード市場は数倍にも膨れあがったことをご存知だろうか。
本格的人口減少社会を迎えるにあたり、少なくとも次のような悲観的見通しをもつのは避けよう。
・人口が減少すると労働者人口が減るので国のGDPも減る。
・GDP低下はやがて国際競争力の低下となり、国民の個人所得の減少となる。
・個人所得の減少は、消費を停滞させ、企業も個人も活力の乏しい暗いムードの世の中になる。
そうではなく、むしろ、人口減少社会を先取りし、ベビーフード市場のように急成長する戦略を考えたいものだ。そして明るい未来を想像してみよう。
・人口は減っても生産性や付加価値の向上で人口の減少率ほどはGDPが減らない。
・つまり、一人あたりGDPや個人所得は向上し、それが新たな文化やライフスタイル、消費行動となる。
・中世ヨーロッパのルネッサンスや江戸・元禄時代の爛熟文化に見るように、人口減少社会は人間がもっとも人間らしく豊かに生活できる素晴らしい時代なのだ。
『人口減少逆転ビジネス』(古田隆彦著 日本経営合理化協会)を読めば、こんなにも明るい未来が待っているのかとワクワクしてしまう。
まだ誰も気づいていない大儲けのタネ 『人口減少逆転ビジネス』
http://www.jmca.net/books/furuta/m/30/
この本を読んでまずビックリしたのが「少子・高齢化と言ったらアウト」という見出し。経営者が「少子・高齢化」などとマスコミの用語を鵜呑みにしていては、それだけで大きなチャンスを逃すことになる、と作者は指摘する。
「少子化」は進んでいない、と作者の古田氏。その根拠は、
2035年の子どもの数は05年に比べて770万人減る。だが、それは1960年代にWHOの提案を受け入れた「子ども」の定義(0~14才)をそのまま使っているからだという。その当時、大学進学率は10%、高校でも60%だったので、15才以上の大半がすでに社会人だったわけだ。それなら「子ども」の定義にも納得がゆく。
しかし、今や高校進学率97%、大学などで50%という世の中だ。新成人の76%もが自分を大人と思っていない社会の中では、子どもを14才までととらえるのはおかしい。
仮に大学院を卒業する年令の24才までを「子ども」とみなした場合、「子ども人数」は昔より増えている、ということだ。
「高齢化」だって進んでない、と著者。
65才以上の高齢者は2035年には現在よりも970万人も増える見通しだ。
だが、高齢者の定義だって平均年令が70才前後だった1960年代に定めたもの。現在の65才以上は、当時とくらべて体力、知力、気力、も充実し仕事や貯蓄、資産運用などで経済力も強い。
「平均寿命マイナス5才」が高齢者の定義にふさわしいと指摘した上で、新たな定義での「高齢者」を計算しなおすと、今よりもずっと高齢者は減っていくのだ。
要するに、「少子・高齢化」は幻想だ、と切って捨てる作者の気迫に経緯を表したい。
興味がある方はお正月休みにこの本を読まれてはいかが。↓
まだ誰も気づいていない大儲けのタネ 『人口減少逆転ビジネス』
http://www.jmca.net/books/furuta/m/30/