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些事を見抜く

「些事でござる」とは、そんな小さなことに時間を浪費したくないという気持ちを表す便利なことばだ。
些事ではない事、つまり大切なことがあるからこそ、ささいな事に対しては、「些事でござる」と即答できる。

そのためには、日頃から何が些事で、何は些事でないのかを整理しておきたいもの。

例えば、毎日膨大な郵便や宅配便、FAXが届けられても机の上は片付いている。なぜそうなるかというと、定期的に整理するからだ。

時間も同じはず。
毎日新しく仕事の依頼を引き受けたり、約束を交わしたりしていく。
でも大切なことや、やりたいことに割ける時間をしっかり確保できるのは、定期的に仕事を整理しているからだ。

だからこそ、”貧乏ヒマなし” にならずに済むし、大切な人との食事や読書、一人の時間だってキープできるのだ。

「武沢さん、大手のハウスメーカーは凄いですよ。だって職人さんの仕事のひとつひとつをストップウォッチで計測し、仕事の所要時間を調べているのですから。そのデータで原価が計算されているというから、スゴくないですかぁ」と、ある地方ハウスメーカーの社長。

そうなのだ。
今や建設業だけでなく、製造業や飲食業、小売業、コンピュータシステム開発などの分野でも、個々の作業時間見積りは分単位(まれには秒単位)で計測されている時代。
こと肉体労働に関してはそれが可能だし、生産性向上のためには、そうすることが効果的だったのだ。

では経営者やマネジャーなど戦略業務、管理業務を行う立場の人や、高度な開発業務に携わるスタッフはどのようにして仕事の整理し、生産性向上に取り組めばよいのだろう。

「継続して時間の記録をとり、その結果を毎月見ていかなければならない。最低でも年に二回ほど、三~四週間記録をとるべきである」と語るのはドラッカー。

さらにこう続く。

「記録を見て、日々の日程を見直し、組み替えていかなければならない。半年も経てば、仕事に流されて、いかに些事に時間を浪費させられていたかを知る」
 (『プロフェッショナルの条件』より)

あなたも使用時間を調査し終わったら、「代わりがきかない仕事は何なのか」を調べてみよう。
どうしてもそれは自分でなければならない仕事なのか。誰かに代わってもらう方法を考えよう。また、もしそれをやめてしまったら何が起きるかを考えてみよう。

ある会社で、郵便物の開封をすべて社員に任せ、必要な郵便だけを自分に回してもらうようにしている社長がいる。自分宛の進展も開封させ、中を見てもらっているらしい。

それによって、彼の郵便処理が毎週2時間かかっていたのが15分程度になったそうだ。毎週1時間45分も浮いたのだ。たったそれだけのことで、年間90時間ほども得したことになる。

社長の時間コストはいくらか?

年収2,500万円の収入と、年間5,000万円の経常利益を得ている会社なので、合計7,500万円を総労働時間2,500時間で得ているわけだ。
つまりこの社長の時間単価は、3万円になる。

郵便業務だけで年間に90時間も浮かせたわけだから、年間270万円も得したことになる。
売上高対比の経常利益率は15%の会社なので、1800万円もの売上げ増加と同じ結果が得られたわけだ。

些事を見抜くために時間を整理しよう。それはまず、使用時間の調査から始まるのだ。