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知的生産術

日刊メルマガをやっているせいか、情報や知識の収集整理法について尋ねられることが多い。

読者の方が勝手に、私のオフィスをこう想像していたときもある。

ものすごく立派な書斎机に書庫と書棚があり、膨大な蔵書の数。高度に発達したファイリングシステムによって、書類や新聞・雑誌などが図書館のように整理され、机の上はきれいにかたづいている。有能な秘書が鳴りやまない電話の応対や大量に届く郵便物や宅急便の処理を行い、メールはその日のうちに粛々と処理されていく。

この想像のうち、スタッフが有能なことだけが事実で、あとは、全部外れている。

蔵書の数はオフィスと自宅を合わせても1,000冊に満たない。たぶん、500冊くらいだと思う。
紙ベースの資料にいたっては、三段ボックス一本しかファイルしていない。コンサルタント歴11年の集大成が三段ボックス1本で事足りているのだ。

ついでに言えば、私のデスクが整理整頓されることは滅多にない。
来客者が一瞬絶句するときだってある。

そう、私のオフィスはものは少ないが雑然としているのだ。

さて、

ふた昔前の知的生産の技法と言えば、KJ法や情報カードによる分類法など、要するに、「いかに知識や情報を所有し、それを分類整理しておくか」という技能にポイントがおかれていた。

ひと昔前になって、情報や知識や所有するものから検索するものに変わった。しかし、検索の対象は紙やスペースや人だった。

20年ほど前、私が尊敬していた職場の上司がこんなことを言ってくれたことを今でも忘れない。

「武沢君、若いうちに身につけておけば一生困らないスキルが三つある。それは何だと思う?」

営業?、金策?、読書?、全部不正解。
ギブアップした私を見て、勝ち誇ったように上司がこう言った。

「それはだな、まず辞書・辞典を引くスキルだよ。国語辞典から始まってありとあらゆる辞典や事典、字典を使いこなせるようになれば、仮に自分は知らなくてもディクショナリーやライブラリーからいつでも検索できるだろう。これはとても大切なスキルだ」

「なるほど、二つめは?」

「それはだな、図書館、商工会議所、中小企業センター、科学館やプラネタリウムなど諸々の公共施設を自由に使いこなすスキルだ。まずは、どこに行けばどんな情報があるかということを知っておくこと。そしていつでも必要に応じて検索できるようになることだ」

「う~む、なるほど、三つめは?」

「それはだな、人脈形成力だ。優秀な学校を出ておくメリットは唯一これにあると言っても良い。何かの分野では日本一、世界一というレベルの人脈から始まって、何かのコレクターだとか”おたく”も含めて自分にないものをもった仲間と仲良くしておくことだ。一番良いのはそいつとメシを喰うことだが、時間がかかってしようがない。俺のように酒好きならそれも良いが、お前は下戸ときている。(当時はそうだった)
昔から人脈づくりには、『筆まめ、電話まめ、足まめ』といわれているように、何かのマメさをもつことは避けて通れないだろうな」

今では、ほとんどの情報がデジタル化された。インターネット上で公開されている無料情報や知識だけでも有り余るほどのものが入手可能と言えるだろう。

つまりは、何を知っているか・知らないかは成功のための武器にもハンデにもならない時代の到来だ。
大切なのは、「何をしたいか・したくないか」「何をやるか・やらないか」といった自分の内側の情報整理と意志決定のスキルである。

<明日につづく>