ある所で、このような質問を頂戴した。
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弊社は従業員9名で、製造業向けに治工具の販売を行っています。
私は30年前の22才のとき、先代社長の父が急逝したことから就職したばかりの大企業を辞めて実家の社長に就任しました。
それ以来、経営者団体などで社長業のイロハを学び、まじめな社員たちに助けられて何とか赤字を出さない程度の業績を維持してきました。
でも早いもので、私も今年52才。少々気力が衰え気味です。
業績も長期じり貧傾向にあるため、積極的な販売計画をたてても、誰もそれが達成できると思えません。率直にいって、今のままでは未来に対して明るい希望がもてないのです。
武沢さんが盛んに書いておられる「偉大ゾーン」からかけ離れた仕事を本業にしているのも一因だと考えています。
いろいろな新規事業を考えてはいますが、スタッフも職人肌なのばかりで、私ひとりで悩んでいます。
具体的に何からどう手をつけて良いのやら。こんな状況を打破していきたいので、何か助言をお願いできませんか。よろしくお願いします。
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まずは、「あなたがすべてだ」と申し上げたい。
考えたことや勉強してきたことをいよいよ実行するときなのだ。
52才で気力が衰えるなんて信じられない。年令ではなく、目標の問題だ。
社員の理解や協力が大切なのはもちろんのこととして、従業員規模が小さい会社を変革させるには、社長がすべての鍵をにぎっていると考えよう。
私は過去何度も自分自身の体験を交えて「偉大ゾーン」で勝負しようということを申し上げてきた。中小零細企業は、おもいっきり本業を狭い範囲で絞り込むべきだ。それは、「好き」で「得意」で「利益」になることに一意専心打ち込むことなのだ。
なかでも一番大切なのは、経営者自身が自社の本業に情熱を持つことなのだ。つまり、大好きな仕事をしなければならない。
ある砂利採集事業の若手社長は、かつて私にこう語ってくれた。
「この仕事は儲かるから我慢してやってきたけど、本当は好きでない仕事だ。最近、儲からなくなってきたので、真剣に偉大ゾーンを見つける必要に迫れてきた」
私は彼に二点のことを申し上げた。
まず第一点。
仕事の好き嫌いを判断する基準は、業種そのもの、あなたの職務、職務のすすめ方、仲間やパートナー、など複数の要素がからんでいるので、何かを変えれば好きになれる可能性がある。
第二点。
何をどう考えても好きになれないのであれば、その事業のリーダー役を続けてはならない。その事業にもっとも情熱をもてる人に任せるべきで、あなたは他のことに専心してはどうか。
と。
大企業であれば、たくさんの事業を手がけ、それぞれに責任者を配置してトータルで成長すれば良いという戦略がとれる。しかし、零細企業は実質的に社長一人だ。
ご質問いただいたように明るい未来を描けないのであれば、猶予期間一年のなかで事業革命計画を作ろう。
まずは次の二つの質問に答えよう。それから、具体的なアクションプランを作るのだ。
・今やっている事業のうち、何は5年後も引き続きやっていたいか
・今やっていない事業で、今後それが採算にのれば幸せだと思う事業は何か