先週の「がんばれ社長!」で中江藤樹の親孝行物語をご紹介した。
その主旨は、親孝行は立派なことなので親孝行しましょう、という提案でもあるが、もっと本質的なことは、親孝行にとどまらず、決めたことは実行するということの大切さである。
陽明学では「知行合一」といい、知ることと行うことは同じでなければならないという教えがあるが、まさしくそれだ。
「知行合一」を貫こうとしたら「狂」の精神が必要になる。自らを狂の人に仕立てていかないと、知行合一を演じきれない可能性が高いのだ。
6月4日(土)、梅雨後半戦の沖縄で非凡会が開催された。過去最高の人数が集まってくれ、山城要幹事のスピーチで幕が開いた。
この沖縄非凡会にもいた。知行合一の精神をもった本物の経営者がいたのだ。
高校卒業後、宅建主任資格を取得し、19才のとき七人で始めた会社なので「七人の侍」だと言っていたら、あまりに厳しい経営環境で仲間が次第に抜け、気づいたら「ラストサムライ」になっていた。そう笑う、「おきしん保証サービス」の宜保文雄社長(昭和42年生れ、38才)である。
アパートなど不動産の賃貸借保証を行う宜保の会社が軌道に乗るまで5年かかった。その後、着々と業容を拡大。資本金は9,250万円に達し、株式公開を視野に入れるまでになった。
10年ほど前には、沖縄の個人、企業の仲をとりもつ新しいカタチの相互扶助”ゆいまーる”を作ろうと、「レキオス倶楽部」を設立。こちらも順調に歩んでいる。
レキオス倶楽部 http://www.lequios-club.jp/corp.html
沖縄を愛し人を慈しむ気持ちをもつ宜保のこんな逸話がある。
ある日のこと、年老いた母親の爪を切ってあげているとき、母にまつわるいろいろな思い出がいっぱいこみ上げてきた。元気だった母、若かった母を思い出し、しわだらけになった今の母の肌を見ると、感謝してもしきれない、なのにオレって、母に何もしてあげていないという心苦しさでいっぱいになる。
その後、思いをカタチにすべく、自分と社員のために「親孝行の日」(親の誕生日に休みを与える)を制定した。
親の誕生日には肩もみでも掃除でも食事でも何でもよいので親孝行してきてほしい、という願いが込められているのだ。
「動機善なりや」という言葉がある。動機が善であるか否かによって、突きすすむエネルギーがまるで変わってくる。障害を乗り越える力が違うのだ。
動機が本人の中で正しく、かつ社会性があり、時宜を得れば成功するのは必然である。そして知行合一の精神を維持するために、自らを狂の人にするのだ。
純粋な動機で動き続けるひとのことを「狂」とよぶ。
事業の内容も、会社の運営方針も軸がきっちりと通っている宜保の会社が成功することは善であり、それをやってきた宜保は「狂」の人だと思えるのだ。ラストであるかどうかは定かでないが、間違いなくサムライ社長ここにあり。