未分類

アミエル

札幌でいつでも新鮮な厚岸(あっけし)の牡蠣を堪能できるお店がある。旬鮮料理店の『開』(ひらく)という。北海道非凡塾の幹事との反省会はこのお店で牡蠣づくし料理を楽しみながらおこなった。
『開』のオーナー藤井さんも途中から加わり、この繁盛店ができあがるまでのご苦労話しを肴に盛りあがったものだ。牡蠣ファンにはたまらないお店だが、なにしろ人気店なので予約は必須だろう。

反省会が終わり、ホテルに向かってススキノを一人で歩いていると、ポツンと一軒の古書店があるのを発見。話し好きのご主人の相手をしながら書棚の本を目的もなくながめていると、『アミエルの日記』全四巻(岩波書店)を発見した。
版元でも品切れで、重版予定も決まっていない作品だと知っていた私は迷わず買った。(4冊で1,200円)

これまでにも「がんばれ社長!」の中で幾つかのアミエル語録をご紹介してきた。

・進歩するものが千あり、退歩するものが九百九十九ある。それが進歩なのだ
・内的な生活をもたない人は、環境の奴隷である
・決心する前に、完全に見通しをつけようとする者は、決心することはできない
・人生の行為に於いて、習慣は主義以上の価値がある。何故かといふと、習慣は生きた主義であり、肉となり、本能となった主義である。
 新しい習慣を学ぶことが万事である

などなど洞察に満ちた詩句をたくさん残している人なのだ。

名古屋に戻り、買ったばかりの古書を読んでいると、またまたハッとするような言葉を発見したのでご紹介しよう。
(旧字体は武沢が改めた)

・・・
黙っている者は忘れられる。控え目の者は言葉尻をつかまえられる。
進まなくなった者は退く。止まった者は追い越され、後回しにされ、踏みつぶされる。成長を止めた者はもう衰え始める。中途で放る者は断念する。停滞の状態は終局の始まりで、死の前ぶれになる恐るべき前兆だ。
そこで、生きるとは絶えず勝っていくこと、我々の物質的精神的存在の絶滅、疾病散佚に対して自己を肯定して行くことである。生きるとは従って休みなく欲すること、もしくは日ごとに自分の意志を取り直して行くことである。
・・・

「生きるとは休みなく欲すること」とあるが、問題は欲するものの中味だ。アミエル自身、日記の中で『独白録』(シュライエルマッヘル著)なる書物を絶賛しているが、その『独白録』では、次の五つのものを求めている。

欲するもの1.内的生活、時間からの解放
欲するもの2.種および個性の実現
欲するもの3.あらゆる敵対的情勢の毅然たる制御
欲するもの4.未来に対する預言者的確信
欲するもの5.不滅の若さ

とある。

物欲ばかりに走ると玩物喪志になる。金銭欲や名誉欲に走り過ぎると周囲が見えない欲ボケになる。かと言って、すべてに満ち足りてしまって感謝ばかりしていると成長が止まる。
「休みなく欲する」対象とテーマを持とう。会社経営においてそのキーワードは、ロマンとソロバン(論語と算盤)の追求ではないだろうか。