「ブラック企業」という言葉がいつから使われ出したのか知らないが、昔は反社会的な勢力とつながっている会社のことをそう言っていた。いつしか、過酷な労働環境で社員を酷使する違法会社のことをそう呼ぶようになった。
「ブラック企業」も細かくみていくと、
・ブラック&ホワイト
・ブラック&ブラック
の 2つのパターンが考えられる。
「ブラック&ホワイト」とは、会社がブラック(法律違反または抵触)で、社員側はホワイトの会社を言う。「ブラック&ブラック」とは、会社も社員もブラックであることをいう。
目ざすべきは、あくまで「ホワイト&ホワイト」である。もし何らかの事情で会社の体制が「ブラック」または「グレー」であるのなら、「ホワイト」にするための計画を発表し社員の理解と協力を求めねばならない。つまり「ホワイト化計画」を発表し、労務環境の改善が企業の近代化のために欠かせない重要な経営課題であるという表明をしよう。
「うちのような規模(業界)でホワイトになんかしたらとても会社が持たない」と、臭いものに蓋をしたり、ほっかむりを決め込んでいると、若くて優秀な人材が入ってこなくなる。
その上で、同時並行のかたちで社内の不平不満分子を一掃する必要もある。会社の内外で会社や経営者の悪口を吹聴する行為は就業規則違反であることを教え、徹底しよう。就業規則に明記されている「会社の秩序を乱す行為」とは、他ならぬ会社の悪口を言いふらすことであるからだ。
匿名で会社の悪口をネットで書き込みするケースは多いが、かつて、解雇された元社員が、会社の悪口をネットで書き込みし、名誉毀損で訴えられる事件がおきた。書き込みの内容は、「○○社は、社員を長時間酷使し、平均睡眠時間3 ~ 4時間で使っていながらきわめて低賃金しか支払っていない。社員は実質上、毎月大幅な赤字である」「社長ならびに社長の妻はこんな人間で、とても経営などに向いている人間ではない」などと書き込んだ。(書き込んだ元社員は、運送会社の運転士だった)
解雇されたことへの腹いせで、軽いグチのつもりだったと本人は主張したが認められず、会社に 100万円、社長、専務にそれぞれ 30万円の損害賠償をするようにとの判決がくだされた。
この場合は不特定多数が見るネット掲示板だったが、特定少数が見る社員専用掲示板ならどうか。あるいは、社員の日報メーリングリストで同様のことを行えばどうなるか、である。
そうした場合でも、就業規則違反である可能性が高い。そこに書かれていることがすべて事実であったとしても、いきなり他の社員の目にふれる場所で会社批判、役員批判と受け取られる内容を公表することは許されるべきではない。
社員に「そんな書き込みをするな」と言いつつも、経営者として足元をよく見つめる必要がある。社員の訴えが再三再四にわたって経営者に届けられていたにもかかわらず放置した場合、社員は意見を公表するという強行手段に出る。社員も決死の覚悟(解雇覚悟)で経営陣に訴えているわけだ。
「ホワイト&ホワイト」企業づくりに際し、経営者には真摯さと冷静さ、それに逸脱した社員に対する毅然さが問われるわけである。