昔、部活の先輩が教えてくれた。
「量が質に転化する。その瞬間が必ずやってくる。それまでは効率など気にせず、脇目もふらずに沢山練習するのだ。結局はそれが上達の早道だ」
その時はそれを信じた。そしてとにかく練習した。だが今思い出すと、この先輩の発言には少しだけ異議がある。
なぜなら、量が質に転化するには条件が必要なのだ。その条件がなければ、単なる長時間の非効率な練習で終始することもある。
その証拠に、甲子園で優勝するチームはかつてのような長時間スパルタ練習の学校ばかりではなくなっているのだ。科学的・精神的なトレーニングも加味せねばならない。
たとえば、筋肉を鍛えているときには、その筋肉がぎりぎりと音をたてているのを聞き耳たてて鍛えるべきだ。鍛えている箇所を強烈に自覚しつつ練習すると効果テキメンだという。腹筋がブチっと切れる音、背筋がメリメリ音をあげるのを聞きながらやるトレーニングと、ただ漫然と消化するトレーニングとは月とスッポンの違いがある。
何を目的に今の練習をしているのかを強く自覚した上で行うことだ。
そうすれば、量が質に転化しやすくなる。それは、企業でも同じだ。
今やっている仕事が、会社全体のなかでどのような位置づけにあるのかを理解させよう。また、未来の夢を実現するために今という時間がどのような位置づけにあるのかも教えよう。
目的を明確にさせてあげればあげるほど、上達スピードが早くなる。
量が質に転化するのは間違いないが、転化するスピードやタイミングをつかませる工夫がなくてはならないのだ。それが良きリーダーだ。