「武沢さん、最近の社員はどうもギスギスしちゃっていけないね」と杉浦社長。
理由を尋ねると、このような出来事があったらしい。
・この会社では好例の正月明け早々のハワイ旅行を毎年の行事として行ってきていた
・旅行期間はすべて休日扱いとし、おもに有給の消化にあてていた
・ところが業績悪化によって、この6年間は行事を中断していた
・昨年、業績が大幅に回復し2004年の正月明けにハワイ旅行を実施しようと社長が皆に発表した
・ところが今回は、社員の多くから休日扱いでの旅行に不満が出て、「出勤扱いの旅行なら参加する」という声が大勢をしめた
・出勤扱いにすべきか、それとも休日扱いにすべきか社長は悩んだ
・その結果、「好きにせい」とばかり杉浦社長はハワイ旅行を取りやめた
というのだ。
残念ながら杉浦社長、二重の意味で甘い。それは、知識が足りないだけでなく、知識を入手する努力も足りないようだ。
まず社員旅行の問題、法律的には出勤扱いであろうと、休日扱いであろうと任意である。つまり会社の決め事として、いずれかに決めておけば良いのだ。ただし、参加が強制されていたり、業務にちなんだ研修がセットされているなど、あきらかに業務の一環とみなされる旅行などは、出勤扱いとしなければならない。
できるものなら、休日を利用するかたちで旅行を行うようにすべきだろう。
そのためには、
・参加が強制ではない(強制のにおいもない)
・参加しなくても不利益を与えない
ということだ。
もう一つ、休日扱いのほうが良い理由がある。それは万一の事故だ。旅行中、社員に事故があってしばらく出勤不能となった場合など、出勤扱いの旅行と休日扱いの旅行では、会社が負うリスクが異なる。明らかに出勤扱いでの事故のほうが会社のリスクが大きいのだ。
そこで提案。
有給を上手にコントロールしよう!有給は年に5日までは社員の自由に使わせ、残りの有給日数は会社が指定するのだ。そんなことが出来るのかって?労使協定によって文書でそれを定めれば良い。
これを「年次有給休暇の計画的付与」という。5日までは本人の申告を尊重せねばならないが、それを越える部分は会社が計画した日にちで付与できる。部署別や班別、個人別など自由に付与できる。こうした計画的付与を利用するなどして、先の社員旅行問題も扱えばよい。
詳しくはお近くの労務士にご相談されたい。
老婆心ながら、腕のよい労務士を選定することがきわめて重要な戦略課題であるとも思う。値段の安さだけで選んではならないし、近くて便利だからとか、助成金を引っぱってくるのが上手だ、などの理由で顧問労務士を選んではならない。
大切なのは、労務士のスタンスだ。依頼主である経営者の立場をよく理解し、経営者寄りの助言と貢献をしてくれる労務士を選ぼう。
労務問題は大切な戦略であることをお忘れなく。