今日一日、何ごともなかったから幸せなのか、何もなかったことが問題なのかは、人によって解釈が違う。それは価値観の違いと言ってよい。映画の歌にある「ありのままでいい」は、人をなぐさめるときには有効だが、仕事の成果や仕事のやり方に関しては許されない言葉なのである。
「深刻な問題が起きたので相談に乗ってほしい」ということがよくあるが、深刻の度合いは会社によってマチマチである。倒産寸前までいってしまって深刻だ、と言う社長もいれば、営業利益率が 10%を割ってしまって深刻な顔をしている社長もいる。
稲盛和夫氏は、「土俵の真ん中で相撲をとろう」と表現したが、まさにそのことである。倒産寸前になってようやく深刻な危機だと認識し、相撲を取りはじめていては遅い。土俵の真ん中で利益率が 10%を割らないように取り組んでいるほうが負ける可能性は少ないのだ。
要するに、問題や異常に気づくのがいつなのか、ということだ。
赤字や倒産といった不幸なことが起きてから変化しようとしても時間がかかる。高い理想、高い目標があれば、問題や異常に気づくのが格段に早くなる。
社長が経営計画書を作るということは、高い理想、高い目標を掲げるためである。そうすることで、社員が異常に気づくようになる。「社長、うちの部署では○○が問題です。何か変えていかねばならないのです」という意見があがってくる。幹部であれば、「社長、○○という問題を解決するために、今月からこんな手を打とうと思います」という提言があがってくる。そういう会社になるために経営計画書をつくり、その大切さを日ごろから社員に訴え続けるのである。