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続・CEO

米国で人気の作者JEFFREY FOX氏が書いた『HOW TO BECOME CEO』は組織の頂点を目指す人々に向けた心得のような本だ。米国の若手エリートたちが何を学んでいるか、その一端を知っておくのも悪くない。同著は全部で75項目あるが、抜粋した項目だけをまず一気にご紹介したい。

1.“やつら”と酒を飲むな
2.たばこを吸うな
3.すべてのオフィスパーティは欠席せよ
4.45分前に出社し、15分後に退社せよ
5.家に仕事を持ち帰るな
6.出張での移動中は上役と離れて座れ
7.ホテルで食事せよ
8.仕事せよ、機内では決して本を読むな
9.手書きの手紙を送れ
10.上役と必要以上の仲良しになるな
11.いつも休暇を取れ
12.月に一日、図書館にこもれ
13.大きな出来事を毎年一つ作れ
14.これらの本から学べ
15.状況にあった服装術を学べ
16.部下に投資せよ
17.部下に余分に支払え
18.愛社精神の旗振り役を担え
19.分かりやすく話し、分かりやすく書くことを学べ
20.成長と魅力はつまらない仕事のあとに来る
21.社内政治から離れよ
22.予算(経費の)を超過するな
23.相手を過小評価するな
24.家族を最高の顧客のように扱え
25.帝国を築こうとするな
26.教えることは学ぶことであり、リードすることである

・・・
次にいつか印象的な箇所を考えよう。まずはいかにも西洋的な文化による合理的な箇所から。

1.“やつら”と酒を飲むな原文では”Don’t have a drink with the Gang”とある。正しく訳せば“同僚と酒を飲むな”となる。「同僚との酒は時間とお金の無駄だ」とまで言い切る。そのかわりに、お酒を飲むのなら配偶者や友人と一緒に飲め、とある。

3.すべてのオフィスパーティは欠席せよ上と似ているが、“非公式な宴会には出るな”とある。また、社員旅行(company picnic)も、夫婦同伴でない限り欠席せよ、と教えている。

6.出張での移動中は上役と離れて座れ移動時間は貴重な仕事時間である。この時間に上役の近くに座ると、どうしても上司の自慢や説教を聞くことになりがちだ。だから、要望されない限り、近くには座らずお互いに仕事せよ、という。さらに、こう付け足す。「上司は仕事の成果ゆえに出世したのであって、話しの上手さゆえではない。上司の仕事時間をあなたが邪魔してはならない」とまで言い切っている。

8.仕事せよ、機内では決して本を読むな「機内ではペーパーバックを読むな」とあるから、「小説などの気軽な読み物を読むな」と訳すべきか。いずれにしろ私たちも、「移動時間は仕事時間」と決めておいてはどうか。雑誌を読んだりビールを飲む、睡眠をとる、などは避けたいものだ。勤務時間中の社員の移動を嫌がる社長も多いが、それは、こうした教育が浸透していないからに違いない。

次に、「へぇー」とびっくりした項目もある。

たとえば、「14.これらの本から学べ」の中で、作者は次の本を推奨している。

・「Obvious Adams」by Robert Updegraff
・「Acres of Diamonds」by Russell Conwell
・「The Bible」(聖書)
・「The Art of War」(孫子の兵法)
・「The Book of Five Rings」(五輪の書)by Musashi Miyamoto
・「On War」(戦争論)by Carl von Clausewitz
・「The Prince」(君主論)by Niccolo Machiavelli
・「Bartlett’s Familiar Quotations」
・「Webster’s Third Unabridged Dictionary」ウエブスター辞書
・「The Forbes Book of Business Quotations」edited by Ted Goo-dman
・「The Complete Works of Shakespeare」(シェークスピア)
・「On Advertising」by David Ogilvy
・「The Sun Also Rises」(日はまた昇る)by Ernest Hemingway
・「The Elements of Style」by William Strunk and E.B.White
・「Huckleberry Finn」(ハックルベリーフィンの冒険)by Mark T-wain
・Anything by Thomas Jefferson(トーマスジェファーソンの書いたものどれでも)

このいずれもがビジネスのHow-to物ではなく、古典的な名著ばかりなのが注目だ。その中に、宮本武蔵の「五輪の書」が入っているのが興味深い。

最後に日本の経営者やビジネスマンにもそのまま参考になる箇所をご紹介してこの稿を終えたい。次の三項目だ。

18.愛社精神の旗振り役を担え”Be a Flag-Waving Company Patri-ot”
作者は、「もしあなたが勤務先の経営者になりたいのであれば、次のことがらにコミットメントしなければならない」として、
・自社製品やサービス
・経営理念
・企業文化

それが可能なのであれば、自社製品やサービスを愛用すべきだし、経営理念や企業文化をあなたの個性の一部にしなければならない、と教える。当然の教えなのだが、これがどの程度できているだろうか。

19.分かりやすく話し、分かりやすく書くことを学べ

経営者には、「コミュニケーション力」が問われる。とくに、わかりやすく話す・書くということを練習しなければならないと教える。話しがわかりにくい、文章が書けない又は難解では思いは伝わらないのだ。

25.帝国を築こうとするな
自分の能力才能を誇示しようとして、経費予算や部下の頭数を要求してはならない、と教えている。帝国を作ることが目的ではない。むしろ最少の予算、最少の人数で成果をあげる人材が企業から求められていることを忘れるな、とまで言い切っている。名言だ。