情景がありありと想像できるようなビジョンには力があり、人を感動させる。マルティン・ルーサー・キング牧師が、1963年8月28日にワシントンDCのリンカーン記念公園で行った名演説も、ビジョンのお手本のようなものだ。
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「私には夢がある。いつの日か、ジョージアの赤土の丘の上で、かつての奴隷の息子たちと、かつての奴隷所有者の息子たちとが、ともに兄弟としてテーブルにつくことを・・・。私には夢がある。私の幼い四人の子供たちが、いつの日か、彼らの肌の色によってではなく、人格の中身によって判断される国に住むようになることを・・・。私には夢がある。いつの日か、アラバマ州で黒人の少年少女が白人の少年少女と手をとりあい、兄弟姉妹のようにともに歩むようになることを。われわれは、黒人も白人も、ユダヤ教徒も異教徒も、プロテスタントもカトリックも、すべての神の子が手に手をとり、古い黒人霊歌の一節にあるように、『自由だ、ついに自由だ、全能の神よ、感謝します。ついに我々は自由になったのだ』と歌える日の来るのを早めることができるだろう」
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※キング牧師の演説はこのサイトで聴けます
http://www.geocities.co.jp/HeartLand-Kaede/2431/mlk.html
『経営者が語るべき「言霊」とは何か』(田坂広志著 東洋経済新報社刊)の中で田坂氏は次のように述べている。
・・・経営者の「志」が伝わらない理由は、その経営トップが本当の「志」を語っているのか、実は「野心」を語っているのか、その違いです。己一代で何かを成し遂げようとする願望、それが「野心」です。「志」とは、己一代では成し遂げ得ぬことを次の世代に託する祈りです。我々は、次の世代に「志」を伝えることです。
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http://www.utobrain.co.jp/review/2003/060200/
私たちは「野心」ではなく「志」を持ち、それを語りたいものだ。そのためにどうすべきか。
経営計画を作る場合でも、一番苦労するのは、「経営理念」を作る時である。目標や計画を作ることは非常に簡単であるゆえ、それだけでもって、“我社には経営計画がある”、“方針書がある”、“ビジョンが決まっている”と考えるのは早計だ。目標や計画、それに数字の羅列だけの計画書が通用したのは、右肩上がり経済の20世紀後半までである。
今一番必要なことは、「理念」「志」「ビジョン」をベースにした方針書である。
・何のために経営をしているのか?
・どのような会社になりたいのか?
・我社の真の目的や役割は?
などを、手短に文章で表現することなのだ。そして、その内容はキング牧師のスピーチのように力をもつ必要がある。
そこで朗報。
今年1月、そうした問題を解決する方法論として格好のテキストが発刊されているのをご存知だろうか。
『ザ・ビジョン』(ケン・ブランチャード著 ダイヤモンド社刊)という。さすが『1分間マネジャー』の著者だけに、読みやすい。それに、ビジョンが力を持つための要素を分かりやすく解説している。あなたのビジョンが周囲を感動させるために、この本を片手に再考してみようではないか。
ザ・ビジョン
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4478732701/