「会社は学校じゃないんだから・・・」
を口上にして、教育に手抜かりはないだろうか。
人材育成を重要な経営課題に掲げる会社は多い。だが、実際に教育に力を入れているところは少ない。せいぜい、朝礼や職場会議を通して、社長の知識を社員に与えているにすぎない所が多いのだ。
人材育成というテーマに本腰を据えて取り組もう。“腰を据える”とはどういう意味か。それは、我社に必要な人材像を明らかにし、計画的かつ体系的な教育を施すことを意味する。社員に対する教育投資は、他のあらゆる投資活動の中で、最も見返りが大きいものになる可能性を秘めているのだ。
人材育成とは、
・OJT(仕事を通じて現場で学ぶこと)
・OFF・J・T(仕事を離れて研修の場で学ぶこと)
・自己啓発(読書や資格取得など独学で学ぶことを支援する)
が三位一体とならねばならない。
私のみるところ、中小企業の人材育成はOJTに偏りすぎているきらいがある。仕事を通して実務処理能力を高め、遂行能力を高めていくことは教育の基本ではあるが、万能ではない。あくまで、上記の三本柱が揃わねばならないのだ。
さて、2月19日(木)号の続き。
初代教育専任職に就任した私は、教育体系を整備することにした。
B4のコピー用箋に縦軸と横軸からなる表を作った。縦軸には、下から順に、「新入社員」、「一般社員」、「中堅社員」、「管理職」、「経営職」と五つ書いた。横軸には、「店舗運営部」、「商品部」、「管理部」、「その他専門職」と四つ書いた。
更にその横には、「OJT」「自己啓発支援」と書く。このタテヨコの表の中に我社独自の人材育成メニューを書き込んでいくのだ。
我社にふさわしい研修教育制度を作るためには、情報が必要になる。
世間一般にどのようなセミナーや講座があるのか、関連する国家資格や民間資格にはどのようなものがあるのか、効果的なOJTの進め方は、などなど、わからないことだらけだった。
そんな折、ふとしたきっかけで「産業労働調査所」なる会社を知る。現社名は「産労総合研究所」というが、人事・教育・労務や賃金など、人事に関する諸問題や情報のすべてが、この会社の専門誌によって入手できることを知った。
「勝った!」私は内心、そう叫んだ。
さっそく会社に内緒で、ポケットマネーで「企業と人材」という専門誌を定期購読することにした。
それ以来、「最近の武沢君の成長ぶりには目を奪われるよ。よく勉強しているね」と社長に褒められ、最高の『S』評価をとり続けたのも当然だ。私しか持っていない知識源、事例源、ニュースソースを手にしていたのだ。
情報とは面白いもの。独自の情報を持つと、それがきっかけとなり、ますます深く、かつ広がっていく。
やがて、同社発行の別冊本が出た。教育体系図を完成させるにふさわしい本だった。ちなみにこの本、いまでも毎年更新され、発売されているが、書店売りはしていない。全国各地にある研修・教育団体のうち、80社ほどのものを網羅した、『人材開発ハンドブック』という。
私はこの本を入手し、ある行動に出た。
<続く>