予定と実績、夢と現実との間には必ず誤差ができる。ほとんどの場合、期待過多の結果がでるのだが、その誤差ゆえに人は悩む。
ある日の私は、予定したTO-DOリスト8項目のうち、1項目しか完遂できなかった。残りの7つは着手すらしなかった。どうしてこんなに情けないのか茫然自失することもある。しかも、それは決して珍しい出来事ではなく、日常茶飯事ともいえるのだ。
こうした事実から、私たちの何が問題なのか、どのような対処が必要なのかを考えてみたい。
まず、誤った二つの結論から申し上げよう。
「私は怠惰で怠慢である。こんなに低い目標意識では大した人物になれない」と言って落ち込み酒をあおること。
あとの一つは、
「まぁ、人間なんだから、たまにはこんな日があっても構わない」と言って開き直り、空元気を出すこと。
このいずれもが間違っていると思うのだ。
心理学に「計画錯誤 (The Planning Fallacy)」という用語がある。これは、私たちが予算や時間、それに人的資源など、計画完遂に必要な資源を常に過小評価し、遂行の容易さを過大評価する傾向を指すものだ。
そうか、私には「計画錯誤」癖があったのだ。
ではどうしたらよいか。答えは二つあるあるようだ。
1.計画段階からもっと現実的になるように努力すること
それによって、計画と実績との誤差が縮まる。これは、“実績に近いところで計画を組む”と言ったほうが良い。
2.計画の見直しよりも、職務遂行能力の向上を図ること
それによって、計画と実績との誤差が縮まる。これは、“計画達成のために背伸びする”要素を盛り込むことになる。
時と場合によって、また個人によって上記二つのうち、どちらを選択すべきかは異なる。
月刊誌「ハーバード・ビジネス・レビュー」2003年12月号に次のような記事がある。
・・・
アニュアル・レポート(年次報告書)に掲載される株主へのあいさつ文を分析した調査によると、経営幹部は好ましい結果については、自分たちの努力の成果とする傾向がみられる。その一方で、好ましくない結果については、天候や景気などコントロール不能な外部要因のせいにしている場合が多かった。
・・・
苦戦している会社の社長が、その理由を述べるときはおおむね天候や景気の話がでてくる。
・長引く不況で
・当業界も構造不況業種で
・冷夏暖冬の影響をモロに受け
当たり前の話しだが、景気が良くなる前提で大規模プロジェクトへの投資を意思決定すると取り返しがつかないことになる。そんなことは誰でも知っている。
だが、知っていることと行動できることとは別物だ。
12/5に民事再生法の適用を申請した名古屋の「ヘラルドコーポレーション」の古川会長兼社長は、「景気が良くなると判断した」と記者会見で述べた。2000年に開設したゴルフ場「グレイスヒルズカントリー倶楽部」の開発にともなう借入金増大と業績不振を招いたのは、景気判断の誤りだというのだ。
このように実際の意思決定段階では、甘くて楽観的な見通しのもとに計画を組むことが多い。最高のシナリオを描くだけではなく、最悪のシナリオも想定してリスク管理をしておかねばならない。
ビジョンや予定とは、「バラ色」だけではいけないのだ。