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続・シュリーマン

師走に入り、クリスマス飾りや年賀状、年末ジャンボ宝くじと一気に気運は新年に向かっていく。折りしも大都市では、昨日から地上波デジタル放送も始まり、新しい時代の夜明けを感じるこの一両日だ。

さて、昨日の続き。

「トロヤ遺跡の発掘」を夢見、14歳の少年が目標を立てた。まず、商人として成功して遺跡発掘に必要な資金を蓄えようという遠大な計画だ。

だが、そうした少年の気持ちとは裏腹に、現実は厳しい。健康を害し、乗った船は沈没する。夢に近づくどころか、どんどん遠くなっていくように思えた。そんなシュリーマンにとって、丸裸で打ち上げられたオランダが、開運のワンダーランドとなったのだ。

成功には、地の利、時の利・人の利が大切だと言われるが、シュリーマンにとって、オランダでの努力がまさしくそれだ。6年間のアンラッキーがウソのように成功を始める。

まず、ある貿易会社会社に就職し、その後の4年間で何と18カ国語をマスターしてしまう。彼のひたむきな努力が認められ、ロシア支店を任されるまでに立身出世。独立した後、10年強の期間で、彼は大商人となって、トロヤ遺跡発掘のための資金を充分に確保してしまうのだ。

あれから月日がたってシュリーマン49歳、ヒッサルリクの丘にたつ。ちなみにこの年令は、今の私と同じだ。

この丘の地下にトロヤ遺跡が眠ると信じた彼は、いよいよ人生の最終目標に向けて、発掘を開始する。
そうした彼の行為に対し、多くの考古学者は、「ホメロスの物語を信じて大金を使うなんてバカげた話さ。あれは単なる伝説だよ」と陰口をたたき合っていた。
穴掘り労働者150人も誰一人として、遺跡を信じている人間など、いない。

シュリーマンの人生は、この発掘という挑戦のためにあった。今さ
ら他人の批判や陰口などが気になるようなヤワな信念ではない。

燃えるように暑い日も、凍るように寒い日もヒッサルリクの小屋を拠点に発掘をつづける。それは「毎日タマネギの皮をむくような仕事でした」と、後に語っている。

そうして2年が経過したる日の午後。

「シュリーマンさ~ん、何か変なものが出てきたました!」と、穴掘り労働者の声。

駆けつけてみると、それは城壁のようなものであり、さらに掘っていくと神殿や宮殿に通じた道も見つかった。やがて土の中から、きらりと光るものが現れた。

それは、黄金の王冠、首かざり、耳かざり、指輪、水入れ…。おびただしい宝ものの数々。

「こ、これは・・・まさしく、」
立ちつくすシュリーマンの脳裏には、子どものころに本で見た、まっかに燃えるトロイの絵がはっきりとよみがえった。
「ホメロスの物語は、やはり伝説ではなかった。わたしが信じつづけたことは、夢ではなかった。」

シュリーマンは、あふれる涙を、こらえることができなかった・・。

しかし、多くの大人たち(考古学者)は最初、この遺跡をトロイのものとは誰も認めようとしなかった。シュリーマンはその後も数々の発掘に成功し、そのたびに、莫大な財宝を発見し、事実を証明していく。そして、68歳のとき、現地に考古学者を集めて学会を開催し、とうとう誰もが認める「トロイ遺跡」となったのだ。

彼の物語と彼の生涯はここで終わっている。

いかがだろうか、これは実話だ。

常識で考えれば、遺跡の発掘をしたいのなら、商人ではなく考古学者を目指すのではないだろうか。決して大商人になるという中間目標を設定したりしない。なぜなら、それ自体が達成できるかどうかわからないし、遠回りに感じる。しかも、大商人になるために彼は、語学をマスターすることに多大な時間を割いている。それだけではない。奥さんを決めるときも自分にない語学ができる人を選んでいるのだ。

生涯の目標を逆算方式で計画したからこそ出来た行動に違いない。

◇最終目標・・・トロイの遺跡発掘
◇中間目標・・・発掘資金と時間を確保するために充分な富の蓄積
◇短期目標・・・貿易商人として成功する
◇手段・・・貿易に必要な語学をマスターする

えてして「戦略的」な行動とは、目的とは違う方向に進むようにみえるものである。新年を迎えるにあたり、私たちの人生や経営にも、シュリーマンと同じような戦略的な考え方が参考になるのではないか。