私達は何かに縛られている。数字やお金、それに人間関係や現実の問題に縛られ、自由でのびやかな精神風土とかけ離れていく場合が多い。
どうせ縛られるのであれば、自らの信条や志、夢に縛られたいものだ。
トム・ピーターズは、『ブランド人になれ』(TBSブリタニカ)の中で、特にカネの危険性についてこう述べている。
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製品でも企業でも革命でも後生に名を残すものの大半は、雀の涙ほどの資金で、地下室やガレージからスタートしている。ソニーもUPSもマリオットもアップルもヒューレットパッカードも・・・みんなそうだった。
(中略)
カネは往々にして虚栄と無駄と奢りをふくらませる。カネは知恵を涸らし、勇気を挫き、活力を奪う。心の中にひそむ「飢えた狼」こそ、明日に生きるダイナモである。
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彼は社会主義者ではなく、ビジネスの第一線をリードする現役の世界的コンサルタントだ。そのトムが、カネを敵視する。なぜか。大切なのは、自分の志であり、仲間であり、同志なのだと言う。
先週は田村設計が社員にあてた「独立宣言書」をご紹介したが、今日は自らの独立宣言文を作ることを提案したい。
独立宣言と言えばアメリカのそれが有名だ。ジェファーソンが起草した文章は次の言葉から始まる。決して翻訳がさわやかとは言えないが、格調高い精神が伝わってくるので紹介しよう。
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<アメリカ独立宣言前文>
人事のおもむく自然のなりゆきで、ある国民が、かれらを他の国民にむすびつけてきた政治的紐帯を断ち切り、自然の法と自然の神の法によって当然うけるべき自立で平等の地位を世界の列強のうちに占めることが必要になる場合、人類の世論への、しかるべき尊重にもとづき、その国民は分立をよぎなくされる理由を宣言すべきである。
われらは、つぎの真理が自明であると信ずる。すなわち、すべての人間は平等につくられ、造物主によって一定のゆずりわたすことのできない権利をあたえられていること、これらの権利のうちには生命・自由、および幸福の追求が含まれていること。また、これらの権利を保障するために、人間のあいだに政府が組織されるものであり、これらの政府の正当な権力は統治されるものの同意に由来すること。さらに、どのような形態の政府であっても、これらの目的をそこなうようになる場合には、いつでも、それを変更ないし廃止し、そして人民にとって安全と幸福をもっともよくもたらすとみとめられる原理にもとづいて新しい政府を設立し、またそのようにみとめられる形態で政府の権力を組織することが、人民の権利であること。
(後略)
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また、明治新政府の基本方針「五箇条のご誓文」の元となった、坂本竜馬の「船中八策」はこうなっている。
・第一策:天下の政権を朝廷に奉還せしめ、政令よろしく朝廷より出づべき事
・第二策:上下議政局を設け、議員を置きて、万機を参賛せしめ、万機よろしく公議に決すべき事
・第三策:有材の公卿・諸侯、および天下の人材を顧問に備へ、官爵を賜ひ、よろしく従来有名無実の官を除くべき事
・第四策:外国の交際、広く公議を採り、新たに至当の規約を立つべき事
・第五策:古来の律令を折衷し、新たに無窮の大典を選定すべき事
・第六策:海軍よろしく拡張すべき事
・第七策:御親兵を置き、帝都を守衛せしむべき事
・第八策:金銀物貨、よろしく外国と平均の法を設くべき事
封建社会に生まれ育ったはずの竜馬が、このような民主社会の出現を想像していたことは、天才的としか言いようがない。世界を見ていた彼の視野の広さと、発想のスケールのデカさがなんとも魅力的だ。
社長ではないあなたも、自分株式会社のオーナーだ。トムが言うようなブランド会社にするもよし、周囲に束縛され、不自由な路地裏のすすけた会社にするもよし、いずれもそれを選んでいるのはあなただ。
さあ、あなたらしいスケールで独立宣言文を起草しよう。
・どのような世界を作っていきたいか
・どのような人間(経営者)になりたいか
・どのような会社(家庭)を作りたいか
を高らかに歌いあげよう。