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起業的な仕事

過日聞いた田口さんの講演は、こんな話から始まった。

「私は学生に起業論を教えることがあるが、今日の皆さんの講演の聴き方も、できれば起業的であってほしい。」

田口さんのいう起業的な聴き方とは、一点でも良いから即・実行可能なアイデアを探しつつ、積極的に聴く、ということである。たしかにその通りで、“起業的聴き方”とは、うまい表現だ。

起業的とは反対の意味で官僚的という表現を用いるならば、官僚的な話の聴き方とは、話を正確に聞こうとするあまり、細かいことが気になってしまう人だ。
稀には、最初から講師の話を批判的・懐疑的に聞いている人もいる。

私もときどき、好きになれない講演者の話を聞くときがあるが、それでも絶対に一つや二つの即戦力アイデアを吸収しようと思っている。

これは、聴き方のマナーの問題ではなく、自分が得する生き方の問題なのだ。

さて、
起業的な聴き方と官僚的な聴き方というものがあるならば、仕事の進め方ついてもそれがあるのではないか。

まず官僚的な仕事のやり方とは、

・完全に見通しを立てようとするあまり、仕事が進まない
・日常業務を優先させ、その後にプロジェクト課題をやろうとするので、いつまでも重要事項が後回しになる
・変更や追加を嫌がる
・時間感覚や納期感覚が乏しい。つまりスピード感が鈍い
・視野がせまく、自分の仕事の守備範囲のことしか気にしない

一方、起業的な仕事のすすめ方とは、

・細部の整合性は、やりながら考える
・日常業務とプロジェクト課題とをバランス良くこなす
・変更や追加がつきものだと思っている
・仕事のスピードが速い
・視野が広く、チーム全体の仕事の成果を考える

仕事や立場によっては、官僚的な仕事が求められることもあるが、経営者は起業的な仕事の進め方が大切なのだ。

「決心する前に、完全に見通しをつけようとする者は、決心することはできない」とアミエルが語った。

事前準備や環境整備の段階で完全を求めるのではなく、ある程度の見通しだけで着手しよう。結果を恐れてはならない。
そして、仕事を進める中で、ドロナワ的に完成度を高めていくような“起業的な仕事”を心がけようではないか。


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