面接の時に「あなたは脳や心臓、精神などに疾患をお持ちですか?」と聞いたところ、「それは個人情報に関することなのでお答えできません」と応募者に言われた。翌日、社長からこんな電話を受けた。
「武沢さん、今は面接で病歴を聞いちゃダメなんですか?」
私は即座にお答えした。「ガンガン聞いて下さって結構です。むしろ、口頭確認では証拠能力がないので、入社書類に病歴に関するヒアリングシートを作ってください。入社してから病歴が発覚して、困っている会社がたくさんありますから」
すると社長は、「武沢さん、大変申し訳ないのですが、今日も明日も面接があるので、その病歴確認のための文章をつくってもらうことはできませんか」と言う。
私は三分後、こんな文章を社長にメールした。
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【○○株式会社 入社時ヒアリングシート】
私は、履歴書に記載した内容がすべて正しいことを誓約すると同時に、以下の病歴についてもここに事実を告知いたします。
病歴があるというだけで不採用になることはありません。しかし、このヒアリングシートの内容も選考資料のひとつになることに同意いたします。また、事実を告知していなかったり、事実と異なることを告知していたことが発覚した場合、それが雇用契約締結の後であっても、その時点で雇用契約が解除されることに同意いたします。
・てんかん歴(有り、無し)
・うつ病、パニック障害などの精神的な疾患歴(有り、無し)
・労災で問題になりやすい脳や心臓、血圧関係の異常(有り、無し)
有りの場合、それはどのような疾患ですか?
最近の発作はいつですか?
現在、どのような治療をしていますか?
医師の「就業許可証」は取れますか?
避けたい業務はありますか?(運転や高所作業など)
前職において欠勤は年間で何日ほどありましたか?
もし私が採用された場合、就業にあたり、健康面で特別の配慮が必要ですか?(はい、いいえ)
「はい」の場合、あなたはどのような配慮を希望しますか?
今日の日付、本人署名欄
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病歴を確認することと「個人情報」を尊重することとは別問題である。企業はひとたび社員を採用すると、病気であることだけを理由に社員を解雇することはできない。病気があっても担当業務をきちんと遂行できる能力があれば、まったく問題ないからだ。ただ、入社してから新たな事実を告げられるようなアンフェアな選考にならないよう、選考時に充分な手を打つべきである。