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続・相互依存の関係

ひと昔前、「オレの会社なんだから、釜戸の灰までオレのものだ」と豪語した社長がいた。株式非公開の私企業なのだから、部下や外部の人間からとやかく言われる筋合いはないというものだ。それでも、周囲を幸せにしてきた実績があり、これからもその自信があるゆえにこうした発言が通用したのだろう。

私は、こうした考えが間違っているとは思わないが、片寄っていると思う。仮に今、こうした発言をする経営者のもとには優秀な人材が入社してくるとも思えない。

企業は社会の公器であるという考えを持つべきだろう。私企業といえども公の存在であるという一面があるのだ。ISOの認証取得や経営品質賞などの審査基準でも、企業の社会性は重要度を増すばかりだ。ISO 9000や14000などと同じように、「企業の社会性の有無」に関するISO認証が始まるという記事を読んだこともある。

そうした中、私が尊敬している著者・田坂広志さんがダイヤモンド社から『これから働き方はどう変わるのか---すべての人々が社会起業家となる時代』を上梓された。

この本は、田坂さんが去る7月1日に設立された「社会起業家フォーラム」の代表として書かれた本でもある。いま、「生き残り」「勝ち残り」「サバイバル」という言葉が溢れるなかで、「働くことの意味」や「働く喜び」「働き甲斐」を見失ってしまったこの時代へのメッセージとして書かれたそうだ。さっそく、この新著をひもといてみた。

同著では、社会起業家としての働き方「7つのライフスタイル」を提唱している。その中に、

・次の世代に「志」と「使命感」を伝えていく

というスタイルが入っている。その解説において、田坂氏は、「志」と「野心」の違いについて言及しており、興味深い。

「志」と「野心」、どちらも大きな夢や目標に向かって一生懸命に努力する点では似ている。だが、氏は「似て非なる言葉」として次のような定義を試みている。

「野心」・・・おのれ一代で、何かを成し遂げようとする願望(自我の満足を満たすもの)

「志」・・・おのれ一代では成し遂げ得ぬほどの素晴らしい何かを、次の世代に託する祈り(自我ではなく、大我)

★『これから働き方はどう変わるのか』
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さて、昨日号でお伝えした通り、全国290万社のうちの7割の企業が赤字である。

それだけではない。
バス事業者の7割が赤字であり、公衆電話の7割が赤字であり、病院の7割が、第三セクターリゾートの7割が、健康組合の9割が赤字である。

コヴィー博士の用語を使うならば、「自立」していない組織が7割もあるということだ。この赤字7割の中には、意図的な租税回避をしている企業も含まれているとは言うものの、「自立」出来ていない組織があまりに多い。

しかもこのような状態は突如起きた異変ではなく、近年続いている現象であり、一体いつまでこの異常事態が続くのだろうと考え込んでしまう。平たく言えば、7割の組織はがんばるしかない。それは、“もっとがんばる”というものではなく、頭を切り替えてがんばってもらうしかないのだ。

そこで大切になるのは、がんばり方である。なぜ、がんばるのかという大義名分を考えてみようではないか。

・経営が苦しいからがんばる
・儲けたいからがんばる
・家族を幸せにしたいからがんばる
・将来豊かな生活をしたいから今がんばる
・・・etc.

という「がんばり」ではうまくいかない。田坂氏の言葉を借りれば、それは「野心」に基づくものである。

仮に今、あなたの会社が赤字であったとしても大切なのは、「志」をもつことだ。そのためには、顧客から見た価値、社会や世の中全体から見た価値を創造していくためにあなたの会社ができる貢献を真剣に考えてみることなのだ。